かえるの子はかえる

 「かえるの子はかえる」といったときに、一番正しい解釈というのはなんで
しょうか。最近では国会議員として3代にわたっているなんて一家がでている
のですが、そうした一家に「かえるの子はかえる」ですねというのは、あたって
いるのでありましょうか。
 文学者家系としても、幸田露伴のように幸田文からは女性ばっかりであり
ますが、4代にもわたって文章を発表している家系もあるのでした。
大岡信さんのところも、その父親は歌人でありますし、息子も小説を発表
していますから、やはり3代でありますよ。
文学者として世にでるのは、親の地盤を引き継いで政治家になるのよりも、
もっとたいへんであるようです。
 歌舞伎をはじめとする伝統芸能は、親からこどもに技能の伝承があって
根絶やしされず、いまにいたっていますが、子どもたちが、親のやっている
伝統芸能を、どうしても好きになれないとか、とっても勉強ができて、将来は
学者になりたいと意識するようになると、伝統芸能の一家に波乱がおこるので
ありました。
 そのむかしのNHKのドキュメンタリーでは、囃子方で鼓を担当する田中家の
ことをとりあげていたのですが、ここでは家業を継ぐはずの長男が研究者と
なってしまったことで、娘さんが父の厳しい教えを受けて、後継者となる
ためのトレーニングの様子が印象に残っているのでした。
 たしか番組は「鼓の家」というタイトルで、昨年でしたか続編があって、
そのときの娘さんが、いまは自分の息子を後継者として、練習をつける様子
がうつしだされていました。こうしたのは、たいへん珍しい例であるので
しょう。
 山口昌男さんが、以前に狂言 和泉流宗家の当代のあまりの出来の悪さに
これで和泉流は大丈夫かと書いていたのを見た記憶がありますが、その心配は
本当になりそうであります。
 一時期「かえるの子はかえる」といったときに、その代表のようにとりあげ
られていたのは、東京出身の相撲取り兄弟でありましたが、なにがいけな
かったのか、仲の良い兄弟といわれていたのが、うそのようなかわりようで
ありまして、このようにも評価はかわるものでしょうか。
 日本の国技といわれた相撲の全盛時代の「立浪部屋」の親方のところの
息子は、お勉強がよくできて、その後旧制高校を経て、大学の教授となるので
ありました。中央大学総長をつとめていた高木友之助さんがそのひとで
ありますが、彼のことは清岡卓行さんの作品「詩禮伝家」にとりあげられて
います。清岡さんの恩師である「阿藤伯海」さんについてかいたものであり
ますが、多感な旧制高校生の圧倒的な影響を与えたひととして阿藤さんは
描かれて、その教えを受けるなかに、後の日銀総裁 三重野康さんとか、
高木さんがいるのでありました。
 いま高木友之助さんで検索をかけておどろきましたが、これは日本の
ドリフターズのメンバーでありました「高木ブー」さんの本名でもありました。
こちらの高木ブーのほうが相撲部屋の息子のようでありまして、将来には、
高木ブーのお父さんは、立浪部屋全盛時の親方であるなんて、人物紹介が
でてきそうな感じです。