小さな古書店(有藤書店)

 昨日に九鬼周造 「近世西洋哲学史稿」のことを書きましたが、
この本がどこかで入手できるところはないのかと、ネットで検索を
かけましたら、ある人のページに、この本のことがのっていました。
 それよりも、このページで小生の目をうばったのは「有藤書店」
川口市という古書店名でした。有藤書店というのはあの有藤さんで
あるのかと店のページを見ましたら、蕨市の店は閉店して、ネット店
のみとしたとありましたので、最近まであの店がやっていたのを
知ったのでした。
 20年ほど前に、川口市芝園団地というところに住んでいたことが
ありました。京浜東北線の線路にそって歩くと蕨市、川口と浦和が
隣接しているという地域でした。
有藤書店は、この蕨市にあった小さな古本屋さんですが、インテリの
ご夫婦がやっていて、ほとんど商売っけのないのでした。店にたちより
ましたら、椅子をすすめられて、奥さんがお茶をだしてくれるような店で
した。
 良くお話をしたのは、奥さんのほうであったかと思いますが、
外国の小説を良く読んでらして、いろいろと教えていただきました。
当時映画が話題になっていた「フランス軍中尉の娘」とか、今は品切れで
入手できないけどバルザック「暗黒事件」はおすすめとか、
今回の岩波文庫復刊では「ユダヤ人のぶなの木」が、長いこと品切れで
あって、値段も高かったなんてことをいわれたのです。
 この店で購入したものでは、エロシェンコ「夜明け前の歌」(大正
10年)のものが、有藤書店のスリップもはいったままになっています。
この本は、表紙が補修されているのですが、ずいぶんと古い本であるせいも
あって、小生はそのことをいわれるまで、補修のことにも気がついては
いなかったのでした。
 今の店は、どなたがやっているのか知りませんが、ホームページを
見ましたら、そのむかしと同じで外国文学と生物関係の本を在庫して
いるようです。
 むかしに通ったちいさな店が、いまも残っていることに感動をおぼえ
ました。当時60歳くらいにおもえたご主人夫婦は、お元気でやって
いるのでしょうか。
 
 そのときにすすめられた「ユダヤ人のぶなの木」が、2月に復刊すると
いうことです。以下のようなものです。興味をもたれましたら、手にとって
みてください。

 岩波ブックレビューから引用
■赤447-1
■体裁=文庫判・104頁
■定価 378円(本体 360円 + 税5%)(2007年2月21日ごろ重版でき)
■1953年8月25日
■ISBN4-00-324471-0
ドロステ=ヒュルスホフ(1797‐1848)はドイツ最大の女流作家である.
これは彼女の唯一の完成された作品で,ひとりの作男が,ある時ユダヤ人を
殺して遁走するが,やがて海賊に捕えられて奴隷となり,17年間酷使された
のち帰郷,かつてユダヤ人を殺したブナの木の下で首をくくって死んでゆく.
作者の筆は恐ろしく荒削りで写実主義に終始し,推理小説としても無類である.