本はねころんで

 本日から、こちらでブログを開設することにしました。
 ことしになって書き溜めたものを、いかにはっておきます。
 気にいりましたら、今後ものぞきにきてください。

  ごあいさつ
 日ごろから、読書関連のブログを見ていまして、自分でもなにかやってみようかと思っ
ておりましたが、
なかなかきっかけがありませんでした。
 年末年始のお休みに、すこし時間の余裕がありましたので、ブログに挑戦です。
 あまり肩肘はらずに、継続することをモットーにやっていきますので、ヒットしたかた
はお付き合いを願います。
 当方は、高校生のころから本の購入を始め、すでに40年近くのキャリアとなりました。
ほとんど、興味のない人には迷惑な存在でありまして、あちこちの愛好家の皆さんも
ご苦労をなさっているでしょう。
 「本を枕に」は、昨年に亡くなった経済学者 日高普さんの本のタイトルをいただいた
ものです。本業の経済学では、まったくなじみがなかったのですが、読書エッセイ
(書評)はとてもよろしで、特に「精神の風通しのために」が忘れられません。今は、
やっているのか創樹社という版元からでたものです。古本物とか、読書エッセイが多く
でているのに、この本が、容易に入手できないのは残念なことです。
 この創樹社は新日本文学関係者の著作が多く刊行されたのですが、「わがヴァリエテ」
というシリーズは、「知恵の悲しみ」長谷川四郎、「若きマチウの悩み」小沢信男という
忘れがたい作品集がありまして、わたしの大推薦のものですが、これについては、また別
の機会に。
 
1 田村義也の本  

 本が好きな人は、程度の差はあっても、ひいきの装丁家がいるのではないでしょう
か。
 古くは、原 弘さんなんて人がいて、筑摩叢書とか平凡社からでた「林達夫著作集」
をやっているのですが、上品なのが特徴でありました。
 つぎには、平野甲賀さんのしごとなどに惹かれました。
犀の本 晶文社の専属のようにして活躍をしていますが、特徴のある書き文字を使った
デザインとなるのは、後になってからでした。70年代中期までの晶文社のものは、
平野さんの装丁もあって、時代の本という印象をもっています。
 あと驚いたのは、杉浦康平さんの作品であります。
講談社現代新書のシリーズが一番めにするものですが、やはり、本領発揮というのは
河出書房からの新鋭作家叢書から埴谷雄高作品集のあたりでしょう。頭部の断層写真を
つかった装丁など、細部まで計算した作品は、いかにも知的に感じました。曼荼羅など
をモチーフにしたものは、そのあとのことでしょう。
 まったく、違った流れで装丁にはいっているひとに筑摩書房吉岡実さん(著名な詩人)
田村義也さんがいます。吉岡さんは、自社のものしかやっていないように思いますが、
岩波の編集者 田村さんは、自社本はほとんど手がけていないように思います。
 一番最初にであったのは、安岡章太郎のものかと思いますが、そのときはぐにょ
ぐにょの書き文字が印象に残ったのです。(「軟骨の精神」であったか。)
 そのあとになって、鶴見俊輔上野英信、内田百鬼園などの作品の装丁を手がけて、
プロの装丁家も顔負けの仕事を残しています。
 田村さんには、装丁について書いた「のの字ものがたり」という著作がありますが、
これは古本屋でけっこうな値段がついているようでした。
 田村さんを敬愛する編集者さんのお骨折りによって、没後に追悼集が刊行され、
そして、今回「ゆの字ものがたり」というものがでます。
 田村ファンには、見逃せない一冊になっています。
 大江健三郎の「ヒロシマノート」の編集者としても著名な田村さんでありますが、
どちらかというと硬派の本の装丁を手がけることが多かったのです。
 近年、これを田村さんの装丁で制作したらと思うようなものが少なくなっています。
なんでも時代のせいにはしたくありませんが、これはそうとうにさびしいことではない
かな。
「ゆの字ものがたり」
田村義也著  新宿書房 46判/376頁/上製 予価本体2800円(税別)
 
くわしくは、こちらをご覧ください。 
http://www.shinjuku-shobo.co.jp/2003Top2.html

久野収の不肖の弟子

 その昔に、あちこちの大学の講義を受けながら学生生活をすごしていた有名なもぐり
学生がいました。本人は、慶応大学に在籍していたのですが、自らの出身ゼミは学習院
 久野収教授のものといっているのです。教授公認のにせ学生というのは、なんと珍し
い存在でありましょうか。
 こういう学生がいたということは、本を読んで知っておりましたが、その人が現在
ではすっかり有名となっている「佐高信」さんであるということは、82年に彼の著書
「斬人斬書」を手にするまで知りませんでした。
 今は、文庫にもなっている「斬人斬書」の元版である島津書房の本は、丸善日本橋
で購入をしたのですが、この佐高さんが、このようにメジャーになるとは思ってもみま
せんでした。
 今から25年前の佐高さんは、とうぜんのことながら、いまほどえらそうではなかった
ように思います。
 このブログを記するのにあたって、「斬人斬書」を取り出してみたら、先日まで手に
していた岩波現代文庫「面々授受」にも同じ話がのっておりました。
 過去の佐高さんは、今の佐高さんを批判したりしないのかな。

 3 久野収に導かれて

 40年ほど前に、高校生活をおくりましたが、この時代は、まだ教養主義のなごりの
ようなものが残っておりまして、このような本は基本図書で、これを読んでいなければ
話にならんというような風潮がありました。
 お正月の朝日新聞なども、そうした路線で1月1日の別刷りで特集していたりして、
批評家が選んだ時代を理解するための10冊なんてのがありました。
小生の記憶に残っているのは、久野収さんがガイドした10冊でしたが、これで
エンツェンスベルガー「政治と犯罪」などを知ることになりました。これを書くにあ
たって、あの新聞の切抜きがあったはずとは思うもののすぐにでてくるはずもありま
せん。
久野収さんのこのブックリストは三一新書の著書におさめられているのですが、
それも、押入れのどこかにまぎれていて、確認ができておりません。
 久野収さんのブックガイドに導かれて、その後の読書路線が決まったのはたしかで、
おかげで、中井正一林達夫という京都学派非主流派のものも手にするようになりまし
た。
 読書案内のありがたさですが、ネットで一網打尽に捕まえるのとは違い、糸をたぐる
ようにして系統だてて読むというのは、それなりに楽しいことでありました。
 最近の若い人たちは、どのようなきっかけで本を手にして、読書の世界を広げていく
のでしょうか。