少女少年たちよ

 客席のファンに向かって、少女少年よと呼びかけたのはステージ上の宮本浩次

さんでありました。

 宮本さんがソロとして歌った女性歌手のカバー曲をメインにしたコンサートは、

「ロマンスの夜」とタイトルされ、わずかに神戸と東京の四公演でありましたが、

そのうち東京の二公演は宮本さん体調不良のためにキャンセルとなり、その代替

公演が16日夜に東京有明のガーデンシアターで開催となりました。

 昨年の東京フォーラムでの公演チケットを確保していた家人は、この代替公演も

申し込むのだと、見事に執念でチケット入手に成功したのであります。

ということで、年明け早々から参戦すべく体調を整え、飛行機と宿を抑え(そうい

えば、夢に終わった東京フォーラムも宿と飛行機は確保していたのですね。公演は

なかったけれど、東京にはいったのですよ。)

 ガーデンシアターは8千人収容のホールで、席は3階部分にあたるバルコニー席

の最前列となりです。前の人が立っても、ステージが見えないということはないの

ですが、下を見ると足がすくみました。家人はともかく付き添いの当方は高いところ

が、からっきし弱いのです。

 待っているしばらくは、高くて後ろの人が立ったりしたら揺れるのではと気になっ

たのですが、それも宮本さんがステージに登場すると、とんでしまったことです。

 このコンサートは、どうしてもやりたかったという宮本さんですから、一曲目か

ら全力疾走でありまして、ものすごいパワーであります。普通であればペース配分

を考えてやるところですが、長距離を全力で走るというのが宮本流でありますね。

 女性の歌がほとんどで、しかもその元歌が発表された時の、オリジナルの歌手は

十代が中心ですので、少女の歌というか、乙女歌を56歳熟年の宮本さんが、その年

齢にふさわしい表現で、少女のように見えるしぐさを含めて、歌うのであります。

 その歌に魅了される客席のエビバディさんたちは、女性は一様に少女に、男性は

少年になってしまうというのが宮本マジックであります。

 会場でしか味わえないところもあるのですが、思ったよりもずっと配信映像がよ

ろしくて、多くの人にこの配信を見てもらいたいと思いましたです。(配信は19日

までアーカイブ配信を有料で視聴可能です。4千円ほどですが、二人で見れば、

お得です。期間内何度でも見ることができますし。)

 どの曲もいいのでありますが、個人的に当方のお気に入りをあげてみます。

 「翳りゆく部屋」 1976年 荒井由実の曲です。ひどく歌うのが難しい曲で、

発表当時のユーミンライブ(たしかFM放送)をきいていますが、高いところで苦労

していて、こんな曲を作らなくてもいいのにと思ったものです。それから45年が経

過して、宮本浩次さんがカバーすることで、やっとこの曲のすごさがわかってきま

した。この歌は宮本さんに歌われるのを待っていたという思いがします。

(ほかにどんな人がカバーしているのか知らんけどです。)

 「愛の戯れ」橋本淳と筒美京平の1975年の曲、歌ったのは平山三紀さん。

不思議な声とリズムで「真夏の出来事」には驚きましたが、それからはそれを上回

るヒット曲はなかったのですが、このような隠れた名曲があったことで、あらため

て、筒美京平門下の平山三紀さんの歌に注目が集まることにです。

カバーというものの一番のありようは、このように隠れた名曲を、歌手の力量に

よってもう一度日の当たる場所にもっていくことですね。

 たいへんですが、宮本さんにはこうした掘り起こしカバーをやってもらいたいと

期待することです。

 アンコールでは、沢田ジュリー研二の曲と自分の持ち歌を披露したのですが、こ

れは、来るべきソロライブへの伏線でありましょうか。

 ともあれ、宮本浩次のマジックにかかって、エビバデさんよ少女少年になろうよ

という話であります。