本日、読了せり。

 ここのところ読んでいました「スウィングしなけりゃ意味がない」をやっとこさで
読了であります。もうすこしあっさりと読めると思ったのですが、すこし苦労したこ
とでして、豊崎社長は佐藤亜紀さんのことをワールドクラスの作家というのですが、
当方は佐藤さんと相性がよろしくないかもしれないな。
 そんなことを思いながら、この小説を読んで気になった言葉などを検索してみまし
た。なにせ1940年ころのお話でありまして、敵性音楽でドイツでは耳にすることが
難しくなったジャズを愛するちょっと裕福な青年たちが主人公であります。
 ヨーロッパはジャズが盛んなところでありますが、それでも戦時下の様子はわから
ずであります。特にこれはどういうふうにやるのかなと思ったのは、ドイツ国内では
ご禁制となったジャズを海賊版レコードをつくることで商売をするくだりであります。
BBC放送(ということは英国の海外向けのものでしょうか)をラジオで受信して、そ
れをトンフォリエンで録音するとあったところです。
 トンフォリエンってなんだであります。そう思って検索をしてみましたら、なんと
作者による、この小説の裏話のページがありました。
 大蟻食の生活と意見   https://tamanoir.press/
 なんとこのページは参考になることです。この小説のわかりにくさは、一度読んで
筋をおさえてから、次にこの参考ページに眼をとおして、再度読むと解消しそうで
あります。
 それでトンフォリエンでありますね。この小説の裏話には、次のように解説が加え
られていました。
「トンフォリエンについて。玉音放送を録音する時、同種の装置を使ったことが知ら
れております。すさまじく高価だったと言われておりますが、ドイツの当時の広告を
見ると、フォルクスワーゲンを今日の軽自動車の新車程度とした場合、今日の邦貨
換算で定価三十五万円ほど、と考えていいと思います。中古ならもっと安い。」
 なんとなく、具体的なイメージがわかないことであります。やたら高価で、玉音
放送を録音するときに、同じようなものが使われたということだけわかりました。
なんといってもテープレコーダーがなかった時代でありますからね。
 そういえば、先日まで手にしていた田中勝則さんによる「中村とうよう伝」に次の
ようなくだりがありました。
「絶対に忘れていけないとうようさんの当時の自慢話があった。いわゆる『海賊盤
作物語』。面白いブートレッグ盤をたくさん作ったという話だ。
 とうようさんのお友達のひとりがディスクカッターという機械をお持ちで、アセ
テート盤という手製のレコードを作ることができた。それを使って、ヴォーグ盤の
『ニグロスピリチュアルズ』などのアセテートコピーを作って、それをマスターに
某レコード会社のプレス工場を使わせてもらってこっそり10枚プレスする、なって
ことをはじめたのだそうだ。」
 60年代はじめのころのことでしょうか。やり方は違うのでしょうが、1940年代の
ドイツの青年たちと同じようなことを60年代にはいると、日本でもやっていたので
ありますね。(もちろん、この時代にはテープレコーダーが普及していたのですが、
それだけでは海賊盤レコードは作れませんですから。)