気分をかえて

 四月にはいってすこし生活のリズムがかわるようなことがあり、それに加えて知人
の葬儀などに出席をしていましたら、ちょっと体調が下り気味になりました。
日によって気温の乱高下も影響しているようですが、風邪をひかないようにしなくて
はいけませんです。
 そんなこんなで気分をかえるために、目先をかえて積読20年ものを手にしてみるこ
とにしました。

安城家の兄弟 (上) (岩波文庫)

安城家の兄弟 (上) (岩波文庫)

 里見とんさん「安城家の兄弟」の岩波文庫ですが、最初の章は1927(昭和2)年に
発表されたとのことですから、書かれてからすでに90年もたっています。
この本のカバーには、次のような言葉がありです。
「すでにその名人芸で『小説の小さん』という定評を得ていた里見とんの自伝的長編
小説」
「小説の小さん」といわれても、「小さん」が名人というのはどの代のことでありま
しょうかと思うことです。当方がなじんだ「小さん」は五代目ですが、もちろんうま
い人ではありましたが、名人と呼ばれていたようには思いませんし、そもそも里見
とんさんとでは時代があいません。どうやら、名人といわれた「小さん」は江戸時代
に生まれて昭和初めに亡くなった三代目のことのようです。
 小説の小さんとは、語り口調がよろしいということになるのでしょうから、これは
読みやすいのではないかと思うのですが、これがけっこう今風ではないことから、な
じむのに時間がかかりそうです。
 古山高麗雄さんと悪い仲間たちの、生きる上での先達というのは、里見とんさんで
はなかったのかなと思ったりもしてです。