古い「図書」から

 岩波「図書」が10月号で800号になったということで特集を組んでいます。
それを見て、当方も家に保存されている古い「図書」をひっぱりだしてきました。
この特集では「大澤聡」さんが、「出版PR誌がない!」という文章を寄せている
のですが、大澤さんはお風呂で本を読むのが好きだという書き出しになっていま
す。
「僕が最初に風呂に持ち込んだのはPR誌だった。なかでも出版社系のそれら。
どのみち読み捨てるのだし。無料配布だし。薄いし。軽いし。」ということです
が、「どのみち読み捨て」られるのがPR誌の運命ようです。
 こんなものを保存している人の気が知れないとは書かれていませんで、この文
中では「『PRハンドブック』の著者である池田喜作のPR誌コレクション5千冊が、
最近、アド・ミュージアム東京に寄贈されたとか」と紹介されていました。
 こういうPR誌に資料的価値を見出して保存していた人がいたというのは当然の
ことでありましょう。保管場所のことなどもあって、なかなかできることではない
のですが。
 なんでも捨てずに保管するという悪癖をもつ当方でありますが、出版社のPR誌は
捨てずにはあるものの、あちこちに散逸していて、どのくらい残っているのかは
確認ができないのですが、そのなかで岩波「図書」については、かなり古いものが
ダンボール箱のなかからまとまってでてきました。
 古い時代のものは当方の父が購読していたものから、抜いて保管していたもので
すが、手元にあるもっとも古いのは、次のものでした。

 荷風全集の刊行にあわせて特集を組んだものです。No160とあります。
 これを見て一番驚いたのは、銀行の広告が掲載となっていることです。銀行だけ
ではなく、「緑の胃ぐすり サクロン」とか「三越」の広告もありました。
ここでは、今は存在しない銀行の広告です。つい最近まであった「あさひ銀行」と
は関係のない「朝日銀行」によるものです。当方は、このような銀行があったと
いうことを今回はじめて知りました。ここには「朝起きの銀行」という文字が入っ
ていますので、他行よりもすこし早くに店をあけていたのでしょうか。

 出版社広告では、筑摩、河出、音楽之友社というところが掲載されていました。
てっきり筑摩は、いまも「図書」に広告をのせているのだろうと思ってみてみま
したら、「ちくま」に「図書」はあって、「図書」に「筑摩」はないようです。
 ということで、この62年12月号からたぶん切れずに広告を掲載しているだろう
と思われるのは、ただ一社「小宮山書店」だけのようです。(途中で抜けていた
らごめんなさいですが、62年12月号と2015年10月号を単純に見比べです。)
 小宮山書店の広告はこの10月号では裏表紙に動いていますが、かってはずっと
次のようなスタイルでした。

 岩波書店刊行書の値段がでているのですが、漱石全集初版十四揃で8500円、
露伴全集新版四十一揃52000円とあります。露伴の価格にびっくりとしてしまい
ます。現代の52千円ではなく、いまから50年前の値段であります。最近の露伴
全集の値段を見て、もう一度びっくりするのでした。