月のはじめに 2

 月のはじめの楽しみといいますと、次々と出版社のPR誌が届くことでありますが、
いつからか前月末に届くものがあったりして、そのうちには月刊誌と同じように、
5月号というのは前月にでたものをいうようになりそうです。
 月刊誌に掲載のものを引用したりするときには、それが刊行された月日を特定する
のがたいへんになってきます。月刊誌に印刷されている発行年月日というのは、一定
のルールをもって、日付がずれているのが一般的でありますからね。月が改まって
からゆっくりと刊行される月刊誌というのは、商業誌ではほとんどなくなるのではない
でしょうか。
 前月末に届いた「ちくま」5月号の巻末にあるちくま文庫の広告をみましたら、
今月は「快楽としての読書 海外篇」丸谷才一さんと「みみずく偏書記」由良君美さん
が同時に刊行されるとありました。ちくま文庫の広告では、すぐ隣り合わせで掲載
されてもいいように思う両書でありますが、間に二冊はさまったいて、これは編集部
による配慮でありましょうか。
 お互いに、お互いをどう思っていたのかはわかりませぬが、由良さんにすれば、
丸谷さんはなんとなく目の敵にしたく思う「秩序」派のお一人でありますからね。
丸谷さんの文庫本は珍しくはないのでありますが、ひょっとして由良さんのもので文庫
となるのは、これがはじめてでしょうか。

みみずく偏書記 (ちくま文庫)

みみずく偏書記 (ちくま文庫)

 元版のあとがきをみていましたら、この書名について、次のようにありました。
「『みみずく偏書記』と題したが、<みみずく>は、わたしの斎号からきており、
<偏書記>というのは、図書新聞の大輪さんが五回連載物に『わが偏書記』という題を
つけて下さったのが気にいったので、採った。片寄った本ばかり読む男という意味と、
書物に偏した人間という意味との双方に懸けているつもりである。」
 青土社からでたこれをはじめに、「みみずく」シリーズは続くのでありますが、
ちくま文庫は、どこまでいれてくれるのでありましょうか。ちなみに、この元版の
編集担当は、詩人の高橋順子さんでありました。