百歳の作家

本の雑誌」8月号の「坪内祐三の読書日記」で、百一歳の作家「秋原勝二」さんが
4月に亡くなっていたことを知りました。
 この文章を眼にしてから、おくればせでしまいこんであった「夜の話」SURE刊を
取り出してきました。
 SUREの本でありますので、これの企画編集は黒川創さんと思われますが、どのよう
にして黒川さんは「夜の話」の作家秋原勝二さんのことを知ったのであろうと思って
検索をしてみましたら、次の記事にあたりました。
( http://book.asahi.com/clip/TKY201006080263.html )
なんとまあでありますが、ここのところで、これまでの疑問が氷解であります。
 佐久間文子さんによる朝日新聞2010年6月の記事には、「全3巻の『〈外地〉の
日本語文学選』(新宿書房)を編んだ作家の黒川創さんによれば、「作文」は当時の
満州で最も活気のあった文芸同人誌だった。」とありました。
 黒川さんは、この「外地の日本語文学」選を編集するときに、秋原さんが参加する
同人誌「作文」をチェックして、秋原さんのことを知るにいたったのですね。当然、
これの同人について知ろうとすれば、秋原さんが健在であったわけですから、話を
きかないわけがないです。
 佐久間さんは、この日本語文学選がでたのを機に秋原さんへのインタビューを行い
朝日に掲載するのですが、このことが坪内さんの「((朝日や読売には訃報が載って
いなかったぞ)。」というくだりにつながるのですね。
 坪内さんは「朝日や読売」に訃報が載っていないといっていますが、掲載したのは、
「東京」と「毎日」であったようです。「毎日」は、書評欄で「夜の話」をとりあげ
ていますので、ちゃんと目が届いていました。
 それとくらべると、目が届いていないのは朝日でありまして、せっかく2010年に
ご本人を他紙にさきがけて紹介しているというのに、亡くなったときは、まるで
スルーしているというのは、佐久間さんがすでに退社していたからでしょうか。
 坪内さんにしてみれば、朝日新聞のていたらくをなさけなやと思い、佐久間さん
がいたら、こんなことにはならんのにと思ったのでありましょう。