旅に持参の本 2

 今回の旅には、二冊の本を携行し、本を買うことがなかったので、本は増えることが
なしでした。本屋に寄ることのない、本を買わない旅というのは、ほとんど記憶があり
ません。
 持参のもう一冊は、これでありました。

 移動の時に、この新書を開いていたのですが、半分くらいも読むことができたかどう
かであります。本日になって、このような章があったことに気がつきました。
 「駅名が文章になる」であります。駅の名前をつらねて文章を作るということになり
ますが、当方は駅の名前は、いくつも知りませんので、文章にするところまではいきま
せん。当方は、このようなお遊びを、原さんの文章ではじめて知ったのですが、この
試みは、1979年9月6日「毎日新聞」夕刊に掲載されたものにあったとのことです。
今から35年も前のことになります。
「海部八郎が、たくらみ、贈った金、うまいことウヤムヤ。高官だけが、ゆうゆうとし、
別格扱いだ。世の中おかしい。こうなると、かげの黒いヤツは、時効を隠れミノ、裏工
作に忙しい。」
 この文章を読んでみますと、なんとなくごろが悪いなとは思うものの、この全文が
当時の国鉄の駅名から出来ているなんて気がつく人は、よほどであります。
海部八郎さんとありますので、これは商社による政府高官への贈賄のことを読んでいる
のです。ちなみに、この文章は、海部、八郎潟、倉見、尾久、津、高、根雨、舞子・・
というふうに駅名がならぶのだそうです。
 これから35年ですから、姿を消した駅もあるのではないかと思います。
これにならって、原さんもいくつかつくっておられます。
三島由紀夫が紅潮し、せきこみながら『モ一度言おうか。昭和維新伝達の時だ。』」
後半を省略ですが、「三島由紀夫が紅潮し」とあったことに反応しました。
三島、油木、男鹿、府中、銚子と続いているのだそうです。
 そういえば、本日は三島由紀夫が自決した日でありました。1970年のこの日であり
ました。当時バイトをしていた電気店の仕事でテレビのアンテナつけに、お客さんの
ところにいっていたときに、臨時ニュースで市ヶ谷での三島の姿を見たことが忘れ
られません。
 原さんが作った「三島由紀夫が紅潮し」の文は、この新書の160ページにありです。
駅名を連ねた文章には「自決直前の三島の無気味な予言を感じる」と、原さんが記し
ています。「無気味な予言」は、この本でご確認ください。