そういえば大阪で購入した文庫本の、もう一冊であります。
- 作者: 鹿島茂
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/10/23
- メディア: 文庫
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多作でありまして、いろいろなジャンルにわたっていますが、古書を買い続けるために
は、本をたくさん出さなくてはいけないのでしょう。
鹿島さんが映画について書いた文章が、どのくらいあるのかわかりませんが、この本
におさめられているものは、鹿島さんの屈折した気持ちが映し出されていて、たいへん
親しみを感じます。
「世間の人が汗水流して働いている昼間から映画館の暗闇の中に身を沈め、コーラの空き
瓶や新聞紙が足元に転がるガラガラの客席にだらしない格好で座って、スクリーンに映る
B、C級映画を見つめていると、自分が何も価値のない穀潰しになったような気持ちに
なって、ある種の自虐的快感さえ感じたものである。」
「ある種の自虐的快感」といえた時期は、まだよろしでありまして、こういう生活を
しているおかげで、大学院の進学に失敗をして、大学5年目になると、時間はたくさん
あるので映画はたくさん見ることはできたが、無事に進学したかっての同級生たちに
対して引け目を感じるようになったとのことです。
こうした日々ではまった映画とその映画俳優について記したものですが、このはまり
方が尋常ではありません。
「1970年から77年までの8年間、年平均3、400本の割合で映画を見たから、その前後
を含めると、10年で3000本以上を見た計算になる。この間、多少ともフランス語を勉強
し、卒論と修論も書いているのだから、いま思うと、よくまあ、それだけの時間がとれた
なと、我ながら感心するのだが。」
鹿島さんは、当方よりも学年でひとつ上であります。現役で東大に入学したようで、
大学院への入学に失敗して大学5年生となったら、大学4年生は東大入試が中止となった
影響で存在しないのでありました。