平凡社つながり 26

 蘆原英了さんの「舞踏と身体」の目次の章立ては、次のようになっています。
 第一章 思い出の舞踊家たち
 第二章 舞踊の周辺
 第三章 スペイン舞踊の世界
 第四章 日本舞踊の身体

 これに収録されている文章で、書かれた時期の古いのは「思想」1938年2月号に
掲載された「菊五郎の眼」というものであるほか、初期のものは第四章にあって
タイトルを見ると、これが蘆原英了さんによるものと眼を疑ってしまいます。
 舞踊の世界では、カタカナで「ナンバン」と書きますと、それは普通とはちがった
意味をもつことになります。蘆原さんの本からです。
「従来、日本舞踊ではこの同側の手足を同時に働かす動きを、『ナンバン』といって
いる。ナンバンはナンバともいわれるが、特殊な場合以外は手足がナンバンになるこ
とを忌み嫌っている。よく子供がナンバンに踊っては、『それナンバンですよ』と
お師匠さんにしかられているのを耳にする。」
 その昔に岩波「図書」で、右手と右足を同時にだして動くことを「ナンバ」と記し
てある文章を見て、あのような動きにも呼び名があることに驚いたものです。
蘆原さんの「ナンバン」という文章は、この動きについての考察となっています。
 まずは、これの語源ですが、これには諸説あるようですが、「恐らく、南蛮から
きたものであろうといわれている」とあります。「尋常でない、見慣れない、異国風
というような意味から、普通と反対の動きをナンバンとよんだのだろう」とまとめて
います。そういうことなのかです。
 日本舞踊では忌み嫌われるナンバンという動きですが、これはスポーツ界のとうてき
競技では普通の動きで、やり投げも砲丸投げも手と足の動きはナンバンになるとあり
ます。フェンシングもそうなります。
「『勧進帳』の幕外の弁慶の有名な飛六法にしても、右手が前に出れば、右足が同時に
前に出、左手が前へふられれば、左足が同時に前へ出されるではないか。
 それどころか舞楽を見れば、何時も同側の手足が同時に同方向に動かされているのを
知るではないか。」
 どうして、このナンバンが忌み嫌われるのかです。