平凡社つながり 27

 ナンバンの本質についての蘆原英了さんの考証であります。
「力のはいった動きがナンバンの姿勢をとると考えるべきであった。
私が真先にナンバンを発見したやり投げや砲丸投げについて考えてみると、これらは
いずれもその物体を投げた最後のポーズがナンバンなのである。
すなわち右手が前に出て物体を投げ、前にでている踏切足がが右足である。それ故
立派なナンバンであるが、これで気づくことはナンバンでは止まることができず、
これを運動の終止点にもってゆけば、前へよろけることがあるばかりだということ
である。・・・平衡を保つためには同側の手足が反対の方向に動かされねばならぬ。
しかし平衡が保たれれば、力を入れることはできないのだ。」
 ナンバンの動きというのは、平衡が保たれていないということで、力がはいって
いるというふうに見えるというのが、日本舞踊の世界では忌み嫌われる理由なので
しょう。
「西洋のダンスやバレエにナンバンの多いことは、それらを力強く活発に見せている。
換言すれば西洋のダンスやバレエの動きが、力強く圧倒的であるのはナンバンの動き
が多いからである。
 日本舞踊が西洋のダンスのように圧倒的で不活発であるのは、実にナンバンの動きを
忌み嫌っているからであるといえよう。
 西洋のダンスの動きが外心的、日本舞踊の動きが内心的といわれる理由の最も大き
なものがこのナンバンにあることを知れば、ナンバンの問題は決して小さな問題では
ないことが分かるであろう。」