平凡社つながり 28

 日本舞踊で力強さを表現するものはあまりないのでしょう。それが蘆原さんをして、
日本舞踊は内心的といわせるのでしょうが、仕事唄などに踊りをつけたものには、
けっこうナンバンがあるようにも思えます。たとえば海の男達が網を引くのを踊りに
するとナンバンになりそうですし、スコップを持つ手と足の関係もナンバンでありそ
うです。
「日本舞踊の動きの多くが日常生活に頼っていることを語り、西洋のダンスの動きが
抽象化された動き、体操的な動きを持っているということを語っている。」
 正統な日本舞踊にはあまり仕事を題材をしたものは、ないように思えますが、それ
はナンバンを嫌ったからでしょうか。
「将来の日本舞踊の振付家はこのナンバンの動きに注目しなければとおもう。私は
これを機として日本舞踊のうち、特にヤンガー・ジェネレーションに喜ばれている
ものを拾ってみたが、それらのいずれもがナンバンの動きを多くもっているのには
今さらのように驚いたものであった。舞楽がわれわれにとって日本舞踊よりずっと
新鮮活発な印象を与えるのは、実に舞楽の手足の扱いが常にナンバンだからである。」
 この文章が書かれたのは1941年でありますから、戦時体制にあった時です。
この時代の「ヤンガー・ジェネレーションに喜ばれているもの」というのはどういった
舞踊であったのでしょう。