異化する空間 4

 昨日に掲載した根津美術館の庭園に咲いていたのは、かきつばたでありますが、
いずれあやめかかきつばたといわれるものの、あやめは沼地には生息しませんので花の
雰囲気はにていますが、生息地の環境はまるで違います。
 沼地に咲いているからこそ、橋がかかっているのですね。橋といっても尾瀬などに見ら
れる木道(ボードウオーク)のようなものです。自宅のどこかに伊勢物語があったろうか
です。これで「八橋」を確認するのですが。
 「陰暦五月二十八日が在原業平の忌日で、陽暦のいまも同日が業平忌、初夏の季語で
す。」というのは、小沢信男さんによる「賛々語々 24」(みすず 2012年5月号)の
書き出しです。この連載は、発句のように俳句を引いて、それを材料に話題を展開し、
最後も同じ俳人の作品でしめるという様式ですが、五月号は、タイトルが「業平忌」と
いうもので、作品は次のものです。
 「 老残のことは伝わらず業平忌   登四郎  」
 これに続いての文章が、前に引用した「陰暦五月二十八日」となるわけです。
東下りの伝説によって、この都の歌人は、隅田川にもゆかりがある。『名にしおはば
いざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと』その渡船場のあたりに架けられた橋に
名付けて言問橋。・・
 そんなわけで、言問橋の界隈は、やたらと業平づいている。ひとつ下流吾妻橋
渡って東へ、水のない大横川をまたぐのが業平橋。その先は北十間川沿に一丁目から
五丁目まで町名がずらり業平。東武伊勢崎線業平橋駅も近くにある。いや、ありま
した。」
 東武伊勢崎線業平橋駅は、いまは名前が変わってしまっていますが、本日はずいぶん
とにぎわったのでありましょう。
 このあたりの地勢に詳しい小沢信男さんにとって、今回のスカイツリーの開業は、地元
の期待が大きいだけに複雑な心境でありましょう。