小沢信男著作 242

 田所泉さんによる「新日本文学<史>のための覚書」の最終章は、「六十年・未完の
実験」となっています。
 最終章の書き出しは、次のようになっています。
「 ひとつの文学運動体が、あしかけ六十年にわたって同じ名称で活動を続けるという
ことは、歴史上も希有な例に属するだろう。創立時の会員はすでに鬼籍に入ったにして
も、一九四〇年代以来の会員、針生一郎小沢信男のような五十年代に前半に入会し
在籍半世紀をこえる会員もあわせ、現役の運動者なのである。それをさして不思議と
思わずにいられるのは、会が発足の当初から、同人雑誌的な結合原理を超えた運動体
だったからにほかならない。それはプロレタリア文学運動以来の伝統でもあったが、
『政治の優位性』に固着する日本共産党との訣別に先駆けて、花田が『芸術の総合化・
大衆化』をかかげて運動理論の構築をめざした際にも、また訣別して自立・自律の
運動をめざした一九六〇年後半からはとりわけ、芸術運動の結合原理についての探求が
深められたのも、新日本文学会がもつ独自の性格が意識されていたためである。」
 「ひとつの文学運動体」といって、ほかに思い当たるものに何がありますでしょう。
「同人誌的な結合原理を超えた」とありますので、普通の同人誌ではないのですよね。
「芸術運動の結合論理」とは、なんでありましょう。