小沢信男著作 213

 山下清さんの貼絵作品を芸術と認めるかどうかが、論争になった時代があったとの
ことです。「裸の大将一代記」には、山下清さんの作品が初めて大きな話題となった
「精神薄弱児童養護展覧展」と、それがきっかけとなってできた「みずゑ 臨時増刊号」
のことが取り上げられています。
 当時のそうそうたる画家や評論家、文化人、マスコミが、山下清など作品が芸術と
いえるかどうかで、議論をかわしています。「みずゑ」は「昭和十五年二月号」で
「『特異児童の作品』座談会」を掲載したとのことですが、この座談会に出席したのは、
「伊原宇三郎、伊藤廉、戸川行男、川端龍子谷川徹三梅原龍三郎安井曾太郎
藤島武二、荒城季夫(以上イロハ順)とみずゑの大下正男」だそうです。
 これに加えて、小林秀雄文藝春秋に「清君の貼紙絵」という文章を寄せているとの
ことです。
 こうした話題のなりかたが、戦後における深沢七郎のデビュー時にもあったなという
のが、<文壇の山下清>につながり、小沢さんの作品つくりにおける「補助線」の役割
を果たすのでありました。