本をならべる 5

 本をならべるということを日々行っているのは図書館人であり、書店員で
ありますが、図書館というところは、基本的に自分の好き勝手に蔵書をなら
べることはできませんので、図書館職員さんも、自分の腕を振るうためには、
自分のおすすめ本の棚をつくるしかありませんですね。
 それでいくと、本屋さんは、なんでもありですから、本のならべかたによって
販売促進につながるというののであれば、智慧をしぼって独創的な展示を考える
ことになるでしょう。カリスマ書店員さんのテーマ別おすすめの本なんていうのは、
新聞の読書欄の掲載本をならべるよりもずっと気がきいていますね。
 映画「いつか読書する日」のラストシーンは、主人公であります大場美奈子さん
(50歳 女性 映画では田中裕子さんが演じています。)の本棚シーンと
なりますが、シナリオ本では「好きな本や思い出の本を選んでもらいました。」と
いうことで、ページが用意されています。シナリオ担当の「青木研次」さんが
構成したものです。
 選ばれた10冊の本のリストは、以前の時にはりつけてありますので、本日は、
そのなかにあって、「仙台が親戚」様も大切にされている「海からの贈物」に
ついての紹介文を引用します。
「17歳の時に母親が亡くなって、高校を卒業するまで米山の叔父さんの家に
お世話になっていました。米山の叔父さんは定時制高校の英語の先生をしていた
人で、3年前に亡くなったんですが、私は叔父さんの家の二階の部屋を使わせて
もらっていたんです。いつだったかこの本が勉強机の上に置いてあったんです。
叔父さんが気を遣って贈ってくれたんです。それからずっと大事にしています。
心細かったり、気持ちが弱っているときに読むと励まされるんですよ。
アン・モロウ・リンドバーグって知ってました?
大西洋横断飛行に成功したリンドバーグの奥さんだった人なんです。好きな文章が
あるんですよ。『私は簡易な生活を望み、やどかりのように何でもなく運んで
いける殻のなかに住みたい』。この一行が好きです。」
 この作中人物に米山の叔父さんはでてきませんので、大場さんという人物に
ふくらみをもたすために作家の青木さんが加えた方です。いかにも、大場さんが
いいそうなコメントで、好感をもてるものです。

海からの贈物 (新潮文庫)

海からの贈物 (新潮文庫)

 シナリオ本に掲載されている文庫カバーの絵は、上のものとは違いますので、
こちらが「銅版画家の二見彰一氏の『海のソネット』」でしょうか。