学問の春 6

 山口昌男さんの「学問の春」平凡社新書です。山口昌男さんのもので平凡社からの
ものはというと、なんといっても「未開と文明」であります。これは編著であるの
ですが、なんとなく山口昌男さんの代表的な一冊のように思えます。ほとんど著書の
ない山口さんを編者にしたのは鶴見俊輔さんでしたろうか、とにかくあの一冊は
インパクトがあったことです。69年 現代人の思想というシリーズの一冊でした。
平凡社と結びつけたのは、林達夫さんでありました。栗カメ様にご指摘いただき
ました。ありがとうございます。http://d.hatena.ne.jp/kurisu2/20090908

新書479学問の春 (平凡社新書)

新書479学問の春 (平凡社新書)

 この著書は、札幌大学における山口昌男さんの講義をまとめたものです。この本の
巻末には「編集後記」を札幌大学文化学部 石塚純一教授が書いています。
「 本書の基になったのは、1997年春学期(4月から7月)札幌大学文化学部で
行われた山口昌男先生の『文化学総論』の講義である。北海道で『文化』の名を冠する
新しい学部を作ろう、なみなみならぬ意欲をもって学部長として着任した年の春だった。
・・・・若者に学問の愉しさを伝えようという熱気がこもっていた。『知』を論じる
山口昌男が近代学問の黎明期にこだわって『学』を語る姿勢も新鮮だった。約三百人が
集う教室には学生だけでなく札幌大学の教員や学外からの参加者も多く見られた。・・
 本書のなりたちについて一言記しておきたい。講義を記録し、録音を文字に起こし、
基本的な構成と編集を行ったのは石塚千恵子と石塚純一。山口先生にその原稿を何度か
読み直してもらい修正を重ねたのは、主に著者の札幌大学退職後(2003年以降)であった。
2008年に入り、いよいよ刊行に向けて本格的作業に入った。病のために体が自由とは
いえなくなった著者の傍らで学びながらサポートしていた若い人類学徒、浅野卓夫さん
にお願いし、編集作業にご参加いただいた。」
 これを書かれた石塚純一さんは元平凡社の編集者でありまして、次の著作があります。
金尾文淵堂をめぐる人びと

金尾文淵堂をめぐる人びと

 山口昌男さんの講義を録音し、文字におこす作業を中心になってやったのは、石塚
千恵子さんですが、この方は迷宮「山口文庫」の「アリアドネー」であります「可憐な
女性」の田中千恵子さんのことであります。
 それにしても、あたらしい学部を立ち上げて、その最初の講義が十数年たって本に
まとまるというのは、素晴らしいことであります。