平凡社つながり 34

 平凡社新書「学問の春」に寄せた石塚純一さんによる編集後記からの続きです。
「今年三月、平凡社編集部の関口秀紀さんに刊行について相談したところ、間もなく新書
編集長の松井純さんから『ぜひやりましょう』との返事をいただき、担当の福だ祐介さん
とのやりとりが始まってあっという間にゲラ(初校)となった。しかし振り返れば、学の
愉しみの中に遊んで道草を食い、ずいぶん長い時がかかってしまった。」
 この後記の日付は2009年6月21日とあります。
 2003年に山口昌男さんが札幌大学を退職されてから、講義録をまとめる企画が立てら
れ、それのテープ起こしをはじめて、2008年にはいって刊行にむけての本格的作業に
はいったとあります。これを見ますと、2008年になっても出版は決まっていなくて、
それを平凡社に持ち込んで、新書になったということがわかります。
 山口昌男さんと平凡社といえば、あまり密な関係ではないと感じていたのですが、
いまほどこの新書の巻末にある主要著作リストを見て、山口昌男さんが注目を浴びたのは
平凡社からでていた「現代人の思想」シリーズの「未開と文明」を編集したことと、
それに「失われた世界の復権」という論文を寄稿したことによってでありました。
 山口昌男さんの新刊は、これからもでるのかもしれませんが、平凡社ではじまって
平凡社で終わるとしたほうがぴったりとします。すくなくとも岩波一辺倒ではなかったの
でありますからね。