日本語の外へ

 「日本語の外へ」は、先日にブックオフで五百円で購入した片岡義男さんの著書です。
ちくま書房から97年にでたもので、小生が入手したのは第7刷で、2000年のもの
となります。653ページが、活字でいっぱい、決して読みやすい本ではありませんが、
あちこちをちょっとのぞいては、読み進める事ができずに本を閉じています。
 この著作は、あちこちの雑誌に書いたものをまとめて一冊にする予定でいた企画を
破棄して4年かけて書き下ろしたとあります。なんとなく、あちこちに書いたもので
あるように見えて、話がつながっていることのわけが、そのあとがきをみると理解でき
ます。
「 アメリカもここまでくると、解決はとうてい不可能である問題を数多くかかえざるを
得なくなっている。大統領や政府が変わってもできないことは出来ないのだが、選挙民は
すべての不可能を実現させるように要求し、大統領候補は絶対に守ることのできない約束
をかたっぱしから結ばなくてはならなかった。各派のとりまとめがうまくいき、彼は大統
領になった。
 アメリカの大統領になるという、彼にとっておそらくは最大の目標を彼は達成した。」
 この文章が、いつどの雑誌に寄稿されたものか、初出を見てみようとしても、そも
そもこれは書き下ろしでありますので、判然としないのでありますが、この文中で彼と
しましたのは、原文では「ビル・クリントン」となっているのでした。
 今年に就任した大統領にも共通することでありますが、16年前から「解決はとうてい
不可能である問題を数多く」という状態であっても、世間的には勝ち組のようにいわれて
いたのでありますから、これはマジック以外のなにものでもありません。