本日も「本の雑誌」9月号をねたにしての駄文であります。
穂村弘さんの連載コラム「続 棒パン日常」の、今月のたいとるは「本を贈る」で
あります。この書き出しは、次のようになっています。
「 好意をもった相手や、この面白さをわかってくれるんじゃないかと思う相手に、
自分の好きな本を贈りたくなることがある。自己満足に近いというか、微妙な
行為だ。でも、ときどきやってみたくなる。・・・・
贈る相手もきまっていないうちから、あらかじめ特定の本を揃えておくのである。
すでに絶版とか品薄になっている作品のなかに、安い値段で見つけたら何冊でも
買うと決めているものが何タイトルかある。これという相手と知り合ったとき、
そのなかから選んでおくるのだ。」
これに続いて、
「 聖少女」 倉橋由美子
「 夢の時間」 金井美恵子
「 時間と自己」 木村敏
「 旅の重さ」 素九鬼子
「 アミとわたし」 稲川方人
「 ラビリンス」 ひさうちみちお
・
・
というようなラインナップで、お気に入りのほんのタイトルが並びます。
ここにあげた本は、ほんのすこしでも小生が知っている物をピックアップした
のですが、穂村さんのリストにある「空の色ににている」(内田善美)というのは、
なんであるかです。まったくはじめてきくものでありまして、いかにもこちらは
時代おくれになっていることです。
ここにあげたリストでは「旅の重さ」が印象に残っています。
そのむかしにあった雑誌「展望」で募集していた「太宰賞」の受賞作であった
はずです。作者の素九鬼子さんは、覆面作家ということで、なにかの時に、
写真をちらっとみたことがありますが、どこかの奥さんで、その写真をみると
知っている人は、あのひとだとわかるようなものだとかいてあったように
思います。
この作品は、のちの「高橋洋子」の主演で映画化されるのですが、えらく
ファザコン内容でありました。四国にわたって、旅芝居の一座に近づき、
三国連太郎とからむところや、高橋悦史になびくなんてのは、父親不在の
少女の恋物語でしかないようにも感じるのですが。
この作品が発表されて時代は、激動の70年代でありましたので、この作品の
ことを「旅の甘さ」なんて、酷評するひともいるのでした。