冥利につきる

 編集工房ノアさんから山田稔さんの新刊「もういいか」が届きました。

奥付を見ましたら、2024年10月17日となっています。あとすこしありますが、

これは、なんか訳ありの日付でありますね。ちょっと検索をしましたら、わかる

日付でありまする。

 今回の新刊には、これまで「海鳴り」と「ぽかん」に掲載されたが中心で、

書き下ろしのものもありますので、とってもありがたい内容です。

「もういいか」 山田稔 編集工房ノア刊  

書名は、「ぽかん」9号(2021年10月)に寄稿した「もういいか 小沢さんと

わたし」によっています。

 2021年といえば、3月3日に小沢信男さんが亡くなった年でありまして、その年

に追悼の意味もこめた文章となっています。本文は18ページほどで、「出会い」と

「手紙」という2つからなっています。

 それでお二人の「出会い」についてであります。お互いのことは富士正晴さん、そ

れに福田紀一さんを通じて知ってはいるのですが、直接にお会いする機会というの

はそんなになくて、多くても3度なのだそうです。

 はっきりと挨拶をかわしたのは、2009年1月の宮川芙美子さんの出版記念会で、

それについでは、2013年11月9日に大阪茨木市富士正晴記念館の特別講演会の

講師として小沢さんが招かれた時とあります。

 講演の後の懇親会のことを山田さんは書いています。

「夕方から阪急茨木駅二階のビアホールで懇親会が開かれた。予約してあった別室

に入りきれないほどの盛況だった。

 司会役の中尾務の指示で主賓の両隣に福田紀一と私が着席、乾杯の音頭を私が

とることになった。・・・

 そのときの写真が書棚の引き出しの奥からでてきた。一枚は公演後に控え室で

向き合って小沢さんと私が大口を開けて笑っている図。もう一枚では小沢さんを真中

福田紀一と私が立っている。」

 このように書かれていて、山田さんの本ではめったにないこと、この小沢、福田、

山田三人の写真が、本文中に掲載されています。

「もういいか」161P 左から福田紀一小沢信男山田稔

 これほんとにいい写真ですね。これは当方の文学史のどこかに太字でかかれる

作家たちの記念すべき一枚なのです。当方的には、福田紀一さんが一緒に写って

いるのが貴重なのですが、山田稔さんも、この三人での一枚に特別な感慨を持った

のではないかな。

 とくだくだ書いていて、察しのよろしい方はおわかりのとおり、この写真を撮影した

のは当方でありました。この写真をなんとか、同好の皆さんにみていただきたいと

思っておりましたが、案ずるよりでありまして、山田稔さんがそれを実現してください

ました。

 ほんとうに冥利につきるというものです。