サバイバル登山 4

 服部文祥さんのサバイバル登山は、それこそ自己責任というもので、まるで異端の
登山であります。いまから百年前の山の猟師たちが、狩猟にでて戻ってこなかったと
しても、警察などが大捜索隊を結成することはなかったのと同じように、戻ってこな
くとも捜索不要というものです。単独で一週間以上の縦走登山をしたりするのですが、
通信手段は持たずなのですから、どこでどうなったかは誰にもわかりません。
 「サバイバル登山家」には、「春期知床半島全山縦走3月25日から4月12日」という
文章と「日高全山ソロサバイバル 日勝峠襟裳岬 2003年8月2日から26日」という
北海道の山の縦走記録が掲載されています。

サバイバル登山家

サバイバル登山家

 どちらの縦走も、登山よりも冒険というような試みでありまして、時間に余裕が
あって、若くて元気の良い大学山岳部などの精鋭がチームを組んで挑むという性格の
ものですが、これをたった一人でやるというのが、服部スタイルです。
 服部さんの文章を見ますと、なんどもこれでもうダメかと思ったという記述がでて
きます。知床にしても、日高山脈にしても何週間も一人で過ごすというのは、普通の
人にはできないことであります。
 そういえば、この町から見ることができる1320メートルの山で、今年にはいって何
人かが遭難して、命を失ったり、行方不明となっています。うち一人は当方の高校
同学年でしたが、登山道から滑落し、意識があるうちに家族とその友人に電話で連絡
をして滑落したことを伝えて、救助の要請をしたということです。普通であれば、
そんなに難しくない山であっても、思いがけないことが起こるものです。
サバイバル登山というのは、単に登山技量だけでなく、生きるための能力や運も強い
人にしかできないことのようです。