岩波少年文庫創刊60年 6

 岩波少年文庫創刊50年を記念して刊行された「なつかしい本の記憶」には、
かって岩波「図書」などに掲載された「岩波少年文庫」についてのエッセイと
斉藤惇夫さんによる「岩波少年文庫とわたし」という講演記録と、有名な姉妹等
による「少年文庫」の思い出話しがのっています。
 斉藤惇夫さんは作家ですが、それと同時にこどもの本の編集者でもありました。
大学を終えて、一般企業に勤務していましたが、どうしてもこどもの本の編集者に
なりたいといって、石井桃子さんのところを訪ねて、紹介されたのが福音館で
ありました。
 斉藤さんの「岩波少年文庫」へのオマージュから引用です。
「私の世代は、第二次世界大戦後の焼け野原的な状況の中から少しずつ立ち
上がって、ここまでやってきました。あの頃まわりに、信じきれる確かなものは
少なかったにせよ、私をふくめて多くの子どもたちは『岩波少年文庫』を読んで、
そこだけはまちがいなく美しい花が咲いていると思い、勇気を得て未来に向かい
ました。いまの子どもたちになんとか伝えたいのです。『世界はまんざら捨てた
ものじゃないんだぜ」ということを。そして『世界が驚きと喜びに満ちている』と
いうことを。それはとりもなおさず、ちょっとテレビとゲームから目をはなし、
勉強の手を休めて、『少年文庫』を読んでごらん、物語の世界で遊んでごらん。
ということなのですが、私は「少年文庫』の宣伝係になってもいいから、その
二つのことをなんとか伝えつづけていきたいと思っています。」
 斉藤さんは、1940年生まれですから、ちょうど当方よりも学年で10ほど年長で
あります。岩波少年文庫が創刊の時に3年生くらいですから、独力で読むことに
なった一番幼い人の一人といえるでしょう。