名作スケッチ4

 白柳美彦さんは、どのような作品をどのような作品をとりあげているかという
本題にやっとこさでたどりつきました。(小生のスクラップには、高杉一郎さん、
前川康男さん、白柳さんの順で整理してありますが、掲載順は前川さん、白柳さん
高杉さんのようです。)
 白柳さんの、第一回目は「星の王子さま」であります。以下は、順不同となり
ますが、「青い鳥」「モンテ・クリスト伯」「北風のうしろの国」「隊商」
「ピーターパン」「杜子春」「次郎物語」というような作品をとりあげています。
 この連載でインパクトがあったのは、「シェークスピア物語」チャールズ・ラムに
ついてのものです。新聞の日曜版で、しかも児童むけの作品紹介となりますから、
読者は小学生も想定でありましょうが、次のようなくだりがあるのでした。
「 運命の女神はあまりチャールズにほほえみかけていたとは思えませんけれども、
 それから七年後に世にもおそろしい事件が待ち受けていました。姉のメアリーが
 気がくるって、母親をナイフで刺し殺してしまったのです。姉は精神病院にいれ
られ、一ヶ月ほどで退院しましたが、チャールズはこのとき一生自分は結婚をしないで、
姉のめんどうをみようと決心しました。まだ二十一歳でした。自分もまえに一度
精神病院にはいったことがあったのです。
 やさしいといわれるといやがったそうですが、ほんとうに心のやさしい人でした。
そのころ勤めていた会社は東印度会社というものでしたが、地位も給料もひくく、
ときどき病院にはいる姉のほかに父親と兄のめんどうまで見なければなりません
でした。姉はようすがおかしくなったときには自分でもわかるらしく、姉と弟が
泣きながら手をたずさえて病院へいそぐすがたを、近所の人はよく見かけたという
ことです。」
 この連載には、挿絵がついているのですが、この回は姉とラムが、二人で手を
とりあって病院へとむかう後ろ姿が描かれていました。
このような内容の連載は、今の時代には、書き直しをしなくては掲載ができないと
いうことになるのでしょうが、むかしは変に言葉のいいかえがないせいもあって、
インパクトが強く、後々までも記憶に残ることになるのでありました。