名古屋からの情報発信

 名古屋といえば、頭に思い浮かべるのはすこしお国なまりで話をする市長さん

でありますね。あのような人が人気を集めて当選を重ねる風土というのは、当方

は馴染めそうにないなであります。

 もっともあの市長さんを支持する人ばかりが住んでいるわけではないはずであり

まして、昨日から手にしている「本の虫 二人抄」を読んでいますと、それを感じ

て、長い歴史に育まれた良質な名古屋の文化の有り様を知ることができることです。

 古田一晴さんが書いている「工作舎物語 眠りたくなかった時代」の名古屋につ

ながるところ。この本には、雑誌「遊」の編集にかかわった人たちの証言を集めて

いるのですが、その「証言者のトリを務めているカリスマ的なブックデザイナー、

祖父江慎もその一人だ。」というのに続いて、次のようにあります。

「祖父江は名古屋生まれの55歳。本の中で、小遣いが少なくて欲しい本がなか

なか買えなかった予備校時代を振り返っている。昼休みになると、うちの店に立ち

読みに来て、しおり代わりにスリップを移動しながら、本を読み継いだという。

『塾よりも、ちくさ正文館に育ててもらっていた気がする』という言葉を読み、

熱いものを感じた。」 2014年12月14日

 いまから10年近くも前の文章でありますが、ほんといい話であることです。

 もう一つも古田一晴さんの文章からで、初めて名前を知る岩田信市さんという

人についてのもの。

「名古屋で出ている芸術批評誌『REAR』の最新41号が岩田信市追悼特集を組ん

でいることを朝日新聞が紹介していた。岩田さんについての単著は、もはや入手

不能といえる本人による美術評論集『現代美術終焉の予兆』ぐらいしかなかった

から、同誌の特集は特筆に値する。」

 この岩田信市さんという方は、60年代後半からジャズ喫茶のオーナーとして

前衛的なミュージシャンのライブもやっていたとのことです。

「65年に名古屋・伏見の路地裏にあったジャズ喫茶『グッドマン』の経営を

引き継ぎ、70年には姉妹店を今池に開いたほどの音楽好きだった。

十数人で満席になる狭いグッドマンに、年譜には出てこないが、フリージャズの

サックス奏者阿部薫を招いてライブを開いたことがある。

 いま考えればファン垂涎の演奏会だ。・・・・

 ちなみに阿部薫の伝記風小説『エンドレス・ワルツ』を書いたのは愛知県愛西市

出身の稲葉真弓、それを映画にしたのは名古屋にシネマスコーレを開設した若松孝

二だった。」

 いい話でありますね。ちょっとつらい話でありますが、「エンドレス・ワルツ」

読んでみようかな。