現代新書50周年 7

 原武史さんが講談社のPR雑誌「本」に連載の「鉄道ひとつばなし」の最新刊は「思想
の源泉としての鉄道」というタイトルであります。なんとまあ大仰なことよと思わなく
もなしですが、この連載が1996年1月号から続いていることや、「思想としての関西私
鉄」と副題がつけられた著作などがあることを見ると、そういわれればそうだなと思っ
てしまいます。

 この「思想の源泉としての」というのは、この本の前書きで紹介されています森有正
さんのエッセイ「思想の源泉としての音楽」(「遙かなノートルダム」所収)への
オマージュとなります。当方の記憶にまったく残っていないのでありますが、森有正
さんの「思想の源泉としての音楽」については、「鉄道ひとつばなし」の最初の一冊
の序ですでに言及されているとのことです。
 原武史さんは「決して読書少年ではなかったものの、なぜか森有正の文章はよく
読んでおり、筑摩書房から発売されたばかりの全集まで買っていた。」と、最新刊の
序で書いています。
 この序は、高校二年生の倫理社会の時間に「森有正がパイプオルガンを演奏する場面」
をみたという書き出しとなります。このあとに、すでに森有正の文章をよく読んでいた
とあるのですから、うーむこれは、さりげなく凄いことを書いているなです。
 1962年 原さん誕生
 1978年 筑摩書房 森有正全集刊行開始
 1979年 原さん高校二年の授業で森有正のビデオを見る
原さんの記述をみますと、全集まで買っていたとあるのですから、それまでに主要な著作
を読んでいたということですね。これが77年くらいとすると、ひきざんをしてびっくり
でありまして15、6歳の時に森有正を読んでいたことになります。なんとなんとです。
 原武史さんの本を読んで、目的もなしに鉄道にのってみたいなと思うのが、普通の人で
ありまして、原さんにならって森有正さんのものを読もうなんて思わないほうがよろしで
ありましょう。