歌舞伎のお勉強 3

 歌舞伎のお勉強とはいうものの、芝居をみるわけではなしで、手近にある本をのぞいて
いるのでありますね。
 本日、手にしたのは、次のものです。

女形の運命 (岩波現代文庫)

女形の運命 (岩波現代文庫)

 最近はジャンルを超えての批評家となっている渡辺保さんの38歳のデビュー作となり
ます。渡辺保さんにとって、「中村歌右衛門」という役者さんは特別な存在でありまし
て、それがために、これに続いて「歌右衛門伝説」「歌右衛門 名残の花」と三冊の本を
発表しています。
「この三冊は、私の歌右衛門についての集大成である。このテーマを選んだことが私の
人生の運命でもあったことを、つくづく思わざるを得ない。」
 これは、現代文庫版に寄せたあとがきでありますが、元版がでてから28年後のことで
ありました。
 元版のおわりには「私は歌右衛門という人を、個人的にはほとんど知らない。私の
知っているのは、舞台の上の歌右衛門だけである。それで充分だったし、楽屋の歌右衛門
に逢ってみたいということはほとんど感じなかった。しかし厳密にいえば、私は歌右衛門
に二度出逢っている。」とあります。何年、歌右衛門の舞台に通い続けたのかと思います
が、その上での発言となります。
 批評家にとっては発表される作品がすべてであり、それで評価するのであって、役者の
個人を問題とはしないのでありますね。
 いまだ、この本の序章をのぞいている段階ではありますが、「女形の運命」というの
は、なんと過酷なものです。