みすず読書アンケート 3

 これまでまったく頭に残っていなかったのでありますが、「マルエン全集」について
ふれていた細見和之さんは、岩波「図書」に発表の「大阪文学学校」の文章とあわせ、
名前がすり込まれました。これまでもアンケートに回答しているのかなと思って見て
みましたら、一昨年からの登場であるようです。
 今年にあげている本は、すべて経済学についてのものでありました。もともとはドイ
ツ思想とありますので、これはなぜにです。細見さんのコメントには、次のようにあり
ます。
「私はもうすぐ五十歳をむかえるが、しばらくは経済学の学習をひとつの柱にすること
になりそうだ。この年齢になって、まさか経済学をいちから学ぶことになるとは思いも
しなかった。」
 どうしていちから学ぶことになったのかはわかりません。
 昨年は、金時鐘さんの詩集と、金時鐘さんを主題とする博士論文をとりあげています。
金時鐘 『失くした季節』(藤原書店)
 著者十一年半ぶりの新詩集。・・日本的な抒情に抗してきた著者自らによる新たな
抒情の追求でもある。そこでは物言わぬ自然がひたすらアレゴリーとして立ち現れて
いて、とても興味深い。
 呉世宗 『リズムと抒情の詩学』生活書院
 在日三世の若い著者による、金時鐘を主題とする博士論文にもとづく大著。
正直なところ不満もある。・・それでも、ついにこういう研究が現れたかと感慨深いも
のがある。」
 昨年に、これを目にしたときには、まったく頭に残らなかったのに、今になってみる
と、なるほどなと思うことです。