百歳までの読書術 6

 昨日に引用をしましたが、人生読本「読書術」巻末にあります参考文献の区分をみま
すと、これは「読書術大全」ともいうべきものを目指していて、そのうちのさわりの
ところだけをまとめてみましたという具合にも思えます。
 特に普通の「読書術」の本ではなかなか見ることができないのは、「不読者は人間
形成にたちおくれるかというような文章が収録されていることでしょう。
 昨日の区分けでいくと「読書と教育」というジャンルに属するもののようです。
 人生読本「読書術」(河出書房 元版1979年)には、次のような文章がならんでい
ます。
・ 不読者は人間形成にたちおくれるか    阪本敬彦
・ 本の読まない子・本を読めない子の指導  遠藤豊吉
・ 子供の読書               金井美恵子
・ 幼児の読書               吉田秀和
・ 少年マンガ 七つの大罪は本当か     副田義也
  
 阪本敬彦さんという方は、この時には「野間教育研究所 所員」という肩書きになって
います。(そのあと大学で教えていらっしゃったようですが、教育心理学とあります。)
 阪本さんによりますと、読みの能力があり、本も身近にあるのに読書をしないという方
を不読者としますと、現代の不読者には大きく二つのタイプに分けることができるそう
です。
 1 積極生活型の不読者 読書意外に現在の自分をかけるべき重要な生活があることを
  意識し、意図して読書をしない。(たとえば大学受験生)
 2 消極生活型の不読者 現在の生活にはっきりとした目的意識もなく、ただ何となく
  日々が過ぎていくようなタイプで、なぜ本を読まないか自分でもよくわからないと
  いった不読者である。努力をせず、安易な生活を好むから、ついテレビにかじりつい
  て読書から遠ざかる。
 
  阪本さんは、このように分類してからテレビの子どもたちへの悪影響を強調します。
「 昭和三十年代後半に急増しそのまま今日にいたっている不読者の多くは、テレビに
 ひきずりこまれた消費生活型の不読者であると考えられるのである。
  これらを放置することはできない。彼らにはテレビを通じた人間形成の道が保障され
 ているとはいえないからである。・・・放っておけば彼らは、ついに一度も真の感動に
 出会うこともなく、ただそのままのイージーゴーイングな人間として育ってしまうで
 あろう。この意味において、不読者は人間形成に立ちおくれるのである。」
 これをそのまま受けたわけではないでしょうが、読書に熱心な家庭では、自宅にテレビ
を置かないというところがありました。人間形成には良かったものでしょうが、この文章
が発表された1973年には、このような主張は違和感をもたれていなかったのであります。
 原武史さんの「滝山コミューン」は1974年のことで、今とは時代が違ことを痛感しま
す。