小沢信男著作 42

 小沢信男さんの「大東京24時間散歩」に収録されていないいくつかのルポで
道草をしていました。ルポというのは、作家 小沢信男さんにとっては本業で
ありますからね。非常に重要な仕事であるわけです。「山岸会」のルポなどに
発表した後、犯罪もののルポの仕事に声がかかることになりました。
 ルポとしては、山岸会などのものがあって、それから犯罪もの発表して、
次に書かれたものが、「大東京24時間散歩」に収録の「労働現場のキビしさよ」
シリーズであります。
 かっては業界誌というのがずいぶんとあって、小説家などを目指す人たちが、
そういうところでライターとして活動をしていたようです。小沢さんがルポを
掲載していた「流通設計」について「一代記」には、次のようにあります。
「1970年ごろには、『流通設計』という業界誌で、連載ルポもやりました。
長距離トレーラーの助手席に乗って、木場から北陸の高岡まで十二時間で行った
のを皮切りに、コンテナ埠頭にいったり、冷凍倉庫に入ったり、ジャンボジェット
機の貨物用に腹の中を覗いたり、あれはほんとにおもしろかった。
 発行元に新日本文学会系の人が何人かいましてね、原稿料のでる仕事を廻して
くださった。業界誌関係にはけっこう左翼系の人たちがいて、それは戦前から
だよね。秋山清さんがいた木材通信社なんか社長以下全員がアナキスト
ボルシェビキ呉越同舟だったとかさ。」
 業界誌とか総会屋系雑誌というのがありましたですね。「現代の眼」とかは、
総会屋がスポンサーといわれていたのですが、総会屋の活動を制限するような
法律改正があってからは、「現代の眼」のような雑誌は生き残ることができず
に、姿を消してしまいました。最近のフリーのライターさんたちは「原稿料の
でる仕事」なんかをまわしてもらうことはあるのでしょうか。