メディア・アート創世記 7

 坂根厳夫さんの「メディア・アート創世記」から話題をいただいています。
 この本には、「科学と芸術の出会い」とサブタイトルがふられているのですが、当方は
「科学」からのアプローチにはまるで弱くって、どちらかというと坂根さんの「遊びと芸術
の出会い」というほうに関心がありました。
 坂根さんの本来のテーマは、「境界領域のアート」についての考察と紹介でありましたが、
皮肉なことに、当方がファンになったのは「遊びと芸術」であったわけです。
 この「メディア・アート創世記」の帯にも引かれているのですが、「あとがき」には、
次の言葉があります。
権威主義的なアートとは異なる、こどもたちから老人までが参加できる新しいアートの
世界が生まれてきていることを、もっと多くの人々に知ってほしいと思うのである。」
 「こどもから老人までが参加できる新しいアートの世界」というのが、本人の思った
以上に、大変な話題をよんで、当方もその波にのみ込まれたのでありました。
「(75年秋のこと)家庭欄で何か人々に訴えるコラムを作ってくれないかと持ちかけられた。
そして同時に、文化欄にも新しい連載をともいわれた。そこで、その年の暮れから、
日曜版の家庭欄には『遊びの博物誌』、文化欄には『科学と芸術の間』といった連載を
始めることにした。
  当時は、戦後の復興期からバブル経済の時代に移りかけてはいたものの、『遊び』の
概念が真面目や勤勉の反対語として敬遠されがちだった時代から抜けだせてはいなかった。
ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』や、オランダの人類学者ヨハン・ホイジンガ
ホモ・ルーデンス』が翻訳され、読まれはじめてはいたが。」
 「遊びの博物誌」と「科学と芸術の間」は、ほぼ同じ時期に朝日新聞の紙面を飾り、
どちらもスクラップした記憶があるのですが、「科学と芸術の間」は難しくて、読み返す
こともなくいまにいたっていますが、「遊びと博物誌」のほうは、その後単行本になった
のも購入し、相当に楽しんだものです。
「私自身は、ホイジンガの思想に述べられていたように、『遊び』を科学や芸術の創造の
場にも繋がる発見精神の原点ととらえたいと思い、そんな視点から身の回りのさまざまな
作品や現象をこの連載で紹介することにした。」
 昨日の「南部めくら暦」などは、この連載に先立ち、こうした視点からの紹介となって
いたものです。