シルバー・コロンビア 2

 作家の堀田善衛さんをwikipediaで検索をしますと、次のようにあります。
「1977年、『ゴヤ』完結後、スペインに居を構え、それからスペインと日本とを往復
する生活をはじめる。スペインやヨーロッパに関する著作がこの時期には多い。」
 これに続いての著作一覧には、次のようなものがありました。
「航西日誌(1978年、筑摩書房
スペイン断章 歴史の感興(1979年、岩波新書)のち集英社文庫 
スペインの沈黙(1979年、筑摩書房)のち文庫 
オリーブの樹の蔭に スペイン430日(1980年、集英社
         のち文庫、「スペイン430日」ちくま文庫 
彼岸繚乱 忘れ得ぬ人々(1980年、筑摩書房
情熱の行方 スペインに在りて(1982年、岩波新書
日々の過ぎ方 ヨーロッパさまざま(1984年、新潮社)のちちくま文庫 
カタルーニア讃歌 新潮社 1984.8 」
 ずいぶんとスペインで生活していた時には、文章を残していることです。
 堀田さんが、77年にスペインに渡るときの利用したのは貨客船で、その船旅に関して
のことを記したのが、「航西日誌」でありました。これについては、拙ブログで以前に
言及したことありました。 ( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20080327 )
 昨日に、佐伯さんが記したグラナダでの堀田さんのエピソードを引用しましたが、
グラナダでの別の住まいのことを、自ら「スペインの沈黙」のなかで記しています。
「この地に着いて紹介してくれる人があってある画家の持ち家を私どもは借りた。
グラナダの中心部から十キロほど離れた村である。名前はウェトール・ヴェガといって、
Vegaというのは豊かな沃野という意味で、野菜や果物はさすがにゆたかであった。
ここで私は、何かをひけらかしたりするつもりはまったくないのだが、日本での生活の
異常さをいささかかんじないではないので、私どもの出費のことを少し書いてみたい。
 家はベッドルーム三、居間一、応接間一、食堂一、それにバス・ルームと台所という
次第で、庭は広くプールがあり、・・この家の家賃が一カ月8000ペセタ(約24000円)
で、光熱費、水道料などもすべてその中に含まれている。・・・ 
 そういえば、マドリードには三食付きで一日300ペセタのペンションまでがあった。
・・日本でのことを考えると、何か後ろくらいことでもしているみたいな感じがする
ことがある。」
 このようなスペインでの生活のことを知って、ここに移住して暮せば、年金でも
いい暮しができますぞというのが、シルバーコロンビア計画でありますが、
そうした計画について、堀田さんが批判しているのを見たことがありました。
言葉の問題とか、医療の問題などに見通しがたたないのに、このような甘い話しに
のるべきでないというようなものであったように思います。
 堀田さんは、グラナダでの生活について、日本とくらべて「何か後ろくらいこと」
と書いていますので、こちらはまともであります。