本日の拾い読み 2

 昨日に一緒に購入した本もぱらぱらとページをめくっています。目に飛び込んで
くる文字のところで、手をとめます。

文学のレッスン

文学のレッスン

 この本には、厳密な意味での索引はついておりませんが、巻末に読書案内という
ことで、本のなかでとりあげられている本についてのリストがついていました。
このリストを参考にしながらの拾い読みですが、本日に反応したのは、丸谷才一さん
の次の発言です。
「おう外なんて、あんなくだらない論争をしなくても、すでに十分に偉いわけで
しょう。つまらない男がほんのちょっと彼のことを悪くいう。するとそれに対して
千万言を費やしてこてんぱんに批判する。
 それがおう外という人なんだ。
 『空車』という文章があります。白山あたりの坂にたっていると、毎日空の大八
車を引いて偉そうにして通り過ぎる男がいる。その男の描写、車の描写、それを
おう外一流の立派な文章で書く。で、終り。何だか全然わからない。篠田一士は何か
のアンソロジーのなかにこれを入れて、解説で『純粋散文』といって褒めているん
です。純粋散文かもしれないけれど、いったい何を論じているのか僕にはわからない
と思っていた。」( 聞き手 湯川豊さんです。 これは対談でありますので、新字
新かなです。おう外というのは、もちろん明治の文豪のことですが、おう外の名前を
漢字で表記することができないので、おうはひらがなとしておきます。)
 ここに反応したのは、篠田一士さんの名前が目に飛び込んできたからですね。
何かのアンソロジーといってますが、これがどこにあったかは言及されていません。
篠田一士、アンソロジー、おう外、空車」ということになると、これは次のもので
ありますね。このアンソロジーはめったに話題になることがありませんので、これを
機に書影をかかげておくことにしましょう。

 これは平凡社からでていた「世界教養全集 別巻2 東西文学論集」であります。
(1963年3月初版、当方の手もとにあるのは、71年4月 第10版 )