本日の拾い読み 3

 昨日に書影を掲げた「東西文芸論集」は、平凡社「世界教養全集」の別巻として刊
行されました。「世界教養全集」は全34巻からなります。別巻は4巻構成となります。
当方は、このシリーズの他巻はもっていないのですが、63年にこの別巻にたどりつい
ているということは、月に一冊くらいのペースであったとしても、60年くらいには刊
行が始まったのでしょうか。
 60年くらいは、まだまだこのような本が求められたのでありましょう。社会全体が
貧しくて向学心があっても、経済的な理由で進学できない人がたくさんいたように
思います。最近も、経済的な事情で進学できないという人はいると思われますが、進
学率が、60年とはくらべられないものですからね。
 大学進学率が高い、この時代において「教養」というのが軽んじらているというの
は、残念でなりません。70年代くらいまでは、高等教育を受けていたら、教養があっ
てあたりまえ、ものを知っていて当然という社会の合意があったようです。
 15年にわたる戦争が、45年に大敗北によって終ったのですが、60年というのは、そ
れからたった15年しか経過していないわけです。日本は高度成長期にはいっているわ
けですが、当方は田舎に暮らしていたせいもありまして、生活していた環境は、ほと
んど戦前と大差がなかったのかもしれません。(すこしモノが豊富になってはいたか
と思いますが。)
 そんななかでの「教養全集」でありまして、これは旧制高校的な「教養人」に求め
られる必読書をまとめたものであるようです。
 別巻の巻末には、この「教養全集」のラインナップが掲載されていますが、これら
のほとんどは、近年読まれなくなっているようです。
 教養全集の何冊分かに収録されているものを、引用することにしましょう。

 第1巻 哲学物語     デュラント
 第2巻 随想録      モンテーニュ
     箴言省察    ラ・ロシェフコー
     パンセ      パスカル
     覚書と随想    サント・ブーヴ
 第3巻 愛と認識の出発  倉田百三
     無心ということ  鈴木大拙
     侏儒の言葉    芥川竜之介
     人生論ノート   三木清
     愛の無常について 亀井勝一郎
 第4巻 三太郎の日記   阿部次郎
     生活の発見    林語堂
     若き人々のために スティーヴンソン    
     愛、愛よりも豊なるもの シャルドンヌ
 
 このような形で34巻が構成されるのですが、今の時代に、これらが読まれなく
なっているのは、時代に問題はないのかな。