大阪散策

 久しぶりに大阪に来た親戚は、いまから25年ほど前に住んでいた時代に
通っていた店に顔をだしたいと、雨のなかを路地をめぐっていました。
大阪を離れてから、その店のことは夢にでてきたとの話となって、その店
ハイボールを飲んでいる夢をすくなくとも3回は見たとか、こんど移り
住んだまちに、支店をだすことになったという夢であったとかです。
それは付き合わなくてはと、地図を片手にお初天神に近い店を探しましたが、
見つかりません。彼は方向感覚がよろしくないので、そのせいかと、当方が
先に動いたのですが、それでも同じところをぐるぐるとまわるばかり。
これはおかしいと、古くからあると思われるお店の方に尋ねると、いまは
工事中で、お休みしているとのお話。むなしくも、彼の思いは通じなかった
のであります。それじゃ、もう一軒と地図情報をたよりに歩きましたら、
こちらは看板はあるようですが、すでに閉店していました。25年の時が
経過していることを強く感じました。

 今回は、時間が厳しいので本屋歩きは、ほとんどできずでしたが、
1時間ほど梅田界隈を歩いたときに、どの本屋にいこうかと思い「旭屋書店
に立ち寄りました。
 その昔は「旭屋書店」が、地域一番店でありまして、70年頃に紀伊国屋
書店が進出してきたのでした。「旭屋書店」というのは、正統派の大きな
本屋でありまして、編集工房ノアから著作をだされる店員さんも在籍して
いらっしゃいました。紀伊国屋書店が新宿文化の代表とすると大阪北の
書店といえば「旭屋書店」でした。あの時代には、梅田の「旭屋」は十分に
大型書店でした。京都に住んでいた学生時代に、吉田秀和さんの「批評草子」
を、ここで購入したことが忘れることができません。すでに刊行されてから
6年くらいもたっていましたが、この時代に、吉田秀和さんの売れない本を
在庫している店は、日本全国ひろしといっても、ほとんどなかったのでは
ないでしょうか。こういった書店が営業的に厳しくなっていく時代ですが、
大阪にいったら「旭屋書店」があるということには、ならないかな。
 今回は、ジュンク堂でもブックファーストでも、紀伊国屋でもなく、
次の本を「旭屋書店」で購入しました。

 この本は、「榛地和」さんの装本に関する本の終わりというだけでなく、
出版社ウェッジの、これまでのユニークなシリーズの終焉となる一冊である
のかもしれません。