「父の娘」として2

 矢川澄子さんの「父の娘として」という文章には、「ふしぎの国」という
戯れ唄がひかれているのですが、これを引用しましょうと思って、拙ブログの
バックナンバーを検索してみましたら、この「ふしぎの国」というのは、一昨年に
「日本のライトバース」というタイトルの時に引用をしておりました。
 全文の引用をしたいところですが、ここではじっとがまんをして、最後の
ところをすこしだけ。
「 詩人たちは貧しく
  男たちはよわい
  子供たちはたわむれ
  そしてたがいに傷つく
 
  わたしは女の子
  母達はさかえ
  石女だけが 
  美しくほろびることができる  」

 この詩は、70年に書かれたもので、それも加藤郁乎の「牧歌メロン」の出版
祝賀会の前夜、お祝いのメッセージをと考えているうちに思いついたものである
とのことです。
加藤郁乎がまだ澁澤龍彦と結婚しているときの矢川さんとのことを記した文章は、
やはり以前に引用していますが、矢川さんは恋多き人という印象はないものの、
この加藤郁乎さんや、谷川雁さんなどが身近にいたようであります。
 それにしても、「石女だけが 美しくほろびることができる」と書いたのは
40歳の時であります。まだまだ若い時期に、このような作品を発表して、それ
から30年ほどして、「美しくほろびる」ということを実行してしまったのですが、
ほかの道はなかったのだろうか。