世界文学「食」紀行2

 篠田一士さんの命日にあわせた話題を展開しようと思っていたのですが、命日を
10日も間違えておりまして、つくづく記憶がいけなくなっていると思うことです、
そんなこんなで、最近に講談社文芸文庫にはいりました「世界文学『食』紀行」を
話題にしています。

世界文学「食」紀行 (講談社文芸文庫)

世界文学「食」紀行 (講談社文芸文庫)

 篠田さんの著作で文芸文庫にいれるのであれば、もっとふさわしいものがあるだ
ろうにと思うのですが、入らないよりはましでしょうか。
アマゾンの在庫を篠田一士で検索をかけたみましたならば、翻訳が一冊で、編者と
してのものが一冊で、ほかには文芸文庫が一冊でてくるだけでありました。
これって相当にさびしい状況ではないかと思うのでした。
昨日に、「世界文学『食』紀行」の「牛めし」をとりあげているところにある
山川均「からす」を紹介するくだりを引用しましたが、山川均さんの書き出しの
文章は、つぎのようになります。
「私は十八の時、田舎から東京にでてきて、東京のものは実に旨いと思ったものが
たった二つある。一つは秋刀魚で、も一つは牛めしだった。それで私は或る月日の
間、全然ではないが、33.3%ばかりは牛めしで生活したこともある。」
 山川さんの文章は、このあと牛めし屋さんで話をするようになった車や(人力車夫)
さんとのことにさらっとふれて、そのあと、列車でのりあわせた男が、手首に桃の
入れ墨をしているのを見て、どこかであったことがある男だなとあれこれ考えて
いるうちに「牛めし」屋であった男であると思いあたるという話ででありました。
 いまどき、山川均さんの文章をとりあげる人なんて、いないでありましょう。
とはいっても、初出からは20年以上もたってはいますが。