継続は力なり 2

 文芸春秋のPR誌「本の話」にのっている、和田誠さんと田中健五さんとの
対談を見ますと、雑誌の表紙を変えるというのが、相当に大変なことであると
いうことがわかります。
 週刊文春も、和田誠さんのまえには、女優さんの写真(秋山庄太郎さんから
立木義浩さんが撮影)であったのだそうです。この路線を変えたのは、編集長と
なった田中健五さんであります。田中健五さんは、次のようにいってます。

「 僕が編集長となって、和田さんに表紙をお願いしたのは、雑誌の雰囲気を
ガラッと変えたかったからなんです。和田さんが立木さんに気を使われたように、
僕も前任の編集長、いまは高名な半藤一利さんですが、には気を使いました。」
(それにしても、半藤さんから田中健五さんへのリレーというのは、ずいぶんと
豪華なものです。田中健五さんは、その後文芸春秋の編集長となって辣腕を
ふるうのですが、それと比べると、半藤さんは編集長としては大物という感覚を
うけることはすくなかったように思います。
 
 さて、31年もやっていると、製版の現場はずいぶんと変化したことでありま
しょう。田中さんが和田さんに製版技術の変化に聞いています。
「 最近は文句を言うことが少なくなりました。とくに今回の画集は、色の直しが
ほとんどなかったです。でもアナログな名人の職人さんがだんだんいなくなって、
今は機械が頼りですからね。文字もコンピューターで打つようになったから、写植や
さんも減ってしまったし寂しいです。廃れゆく中にいい写植があったんですけどね。
文明の進歩と僕らの美的感覚との相性がよくないんですかね。
 編集者にビジュアル的センスがあれば、雑誌のADなんて必要ないんですよ。
昔は『暮しの手帖』の花森安治とかセンスのいい編集者がいたでしょ。だんだん
ビジュアルはADに任せようという編集者が増えてきた。」

 和田誠さんは、本の裏表紙にバーコードを印刷することに異をとなえていて、
自分が装幀した本には、バーコードの印刷を許可していませんが、こういう
こだわりが週刊文春の表紙を長期で担当できることになっているのであります。