- 作者: 山口昌男
- 出版社/メーカー: 右文書院
- 発売日: 2008/10
- メディア: 単行本
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数年ぶりでの山口昌男さんの著書となります。旺盛な活動を続けていた山口昌男さんは
2001年に脳溢血で倒れて、それからは文章を発表することがすくなくなっている
ようです。
今月に刊行された「本の狩人 読書年代記」は、1954年から2003年までに
発表された書評や文庫本の解説など本についての文章のなかから、単行本に未収録の
ものを集めたものであります。この本は巻末の資料も充実していまして、山口ファンには
必携の一冊となっています。
いつころからか、編集者 川村伸秀さんは、山口昌男さんの専任編集者または
影武者のごとくでありまして、本人よりも本人の著作にくわしい人となっています。
小生は、編集者 川村さんの存在を知ったのは「山口昌男山脈」からでありますが、
「山口昌男ラビリンス」(国書刊行会)などは度肝を抜かれたものです。
小生が購入した単行本で一番高価なものの一冊が、「山口昌男ラビリンス」となり
ます。今回の本は、このラビリンスの補遺のような趣であります。
とりあえず、今回の「本の狩人」を斜め読みをしていて、眼にとまったところからの
引用です。( ちょうど昨日に立ち寄りましたブックオフが、単行本一冊5百円セールと
いうのをやっていまして、ここ棚から鶴見良行「ナマコの眼」元版を500円で入手
しました。ちくま学芸文庫に入ったときに購入をしておりましたが、やはり元版の
ほうが読みやすそうであります。)
鶴見良行 「ナマコの眼」( 対談形式での書評となっています。)
「 この本は、著者のアジア学の集大成のようなところがあると思うのです。つまり、
『マラッカ物語』『マングローブの沼地で』『海道の社会史』『辺境学ノート』と
いった先行する諸著作の良き部分がこの本のなかに流れ込んでいると思うのです。
・・・
この本で驚いたことの一つは、私の埋もれかかった記憶が突如として魅せられる
ようなページにであうことです。例えば、次のような記述です。
『 サゴでんぷんは、サゴヤシの樹芯を水にさらして生成したでんぷんである。
主食で分類すると、マルクはサゴ食文化圏である。サゴでんぷんは域内の自給
食品と思われるのだが、バタビアの東インド会社の統計にもかなり登場する。』
なぜ書いたかといえば、このでんぷんを熱湯で溶かして凝固させたゼリー状の
食物は、子供の頃「カタクリ」といって北海道では風邪などをひくと、よく食べ
させられたからです。ブル島の山地帯を旅しているときも、食事のおわりにおばさんが
でんぷんをこねながら出てきて、食器にほれ、とばかりに入れてくれた。これは
驚きました。」
「でんぷんを熱湯でとかして凝固させたゼリー状の食物」というのは、小生の子供の
ころも体調がよくないときに食べましたが、これって北海道では「カタクリ」という
のですが、ほかの地域ではどのようにいわれているのでしょうか。