季刊「湯川」No.7

vzf125762008-10-18

季刊「湯川」No.7は、80年11月刊行となりました。
これまでの「湯川」は、リトルマガジンという趣のものでありましたが、
前号がでた79年8月から、一年3ヶ月がたってでた「湯川」No.7はすべて
魔笛」の特集でありまして、これまでの号よりも「PR誌」という感じに
なっています。これまでは、本文だけでも55頁ありましたが、この号は34頁と
薄くなっています。
( 自分では定期購読していると思っていたのですが、小生の手元には、このNo.7は届いて
いないように思います。この前号で前金が切れていたのかもしれませんし、間隔が開きすぎて
定期購読者の管理ができなくなったのかもしれません。そういえば、編集工房ノアからでる
リトルマガジン「海鳴り」は、昔は購読料をとって、定期刊行物でやっていましたが、いつ
からか不定期(年一度のペース)となって、それにあわせるように、この冊子から価格の
表示がなくなって、無料配布となったように思います。あれは定期刊行物で、有料のものは
郵便料金が割引適用を受けられるということのために、無理して定期で、価格をいれて
いたのかもしれません。)

 この岡田露愁「魔笛」特集については、以下のとおりです。

 表紙 岡田露愁  木版画集 モーツアルト魔笛」より

 塚本 邦雄  月光変 (魔笛に寄せて)
 三浦 淳史  鬼才は<魔笛>に挑む
 有田 佐市  魔笛
 杉本秀太郎  楽しみな舞台

 杉本さんの文章には、次のようにあります。
「 いっこうに人気のでない木版画のかげに隠れて徐々にこの芸術の組織回春のために
 励んでいる木版画師がいる。そんなときは、木版画の不人気をあわてて引き剥がすような
 挙にはでないで、じっくり待っているのが、木版画のためには、少数とはいえ絶えざる 
 木版画愛好者のためにも良いことだ。
  岡田露愁は、土蜘蛛のように、巣のかさぶたを持ち上げて外をうかがい、折良く巣の
 ふちに近づいてきた獲物に狙いをつけ電光一閃、獲物をくわえると、巣のなかに引き入れた
 ばかりである。・・・獲物がモーツアルトの『魔笛』だったというのだから、土蜘蛛も
 モーツアルトの音楽に魅せられるだろう。
  打ち見たところ、岡田露愁には、木版画のあらゆる技法はすでに修得済みである。
 芸術はここからはじまる。片唾を呑んでみるだけの値打ちのある舞台が、木版上に
 くりひろげられるだろう。」

 この号の広告です。

 岡田露愁木版画集 「魔笛モーツアルトのオペラによる

 「 突如、彗星のごとく出現して、木版愛好者を唖然たらしめた岡田露愁が、その
  技倆のすべてを投入してモーツアルトの名作オペラ「魔笛」に挑戦。木版画によって、
  この著名なオペラを紙面に刻印して書物のなかに華麗なる舞台を展開する。
   愛書家、版画愛好家、そして世のモーツアルティアンに贈る一大絵巻。
  50枚の木版画による『魔笛』 一二月中旬刊 限定九九部
  
   岡田露愁の木版画集『魔笛』は、一冊すべてオリジナル木版画によって成り立って
  います。表紙や見返し、目次、扉、奥付なども各々一ツの作品として制作され、合計
  いたしますと作品は総数五〇点になります。  ・・愛媛宇和島産の宇和楮紙を使用
  しています。本の体裁は、表紙の平に木版画を使用し、背は皮か他の材料を使用。
  二重上製函に納めます。
   頒価は十九万円です。
   前納金五万円の納付をもってご予約を承っております。」
  
 この宣伝文に続いて「雁名告造」さんが「露愁版画の魅力」という文章を寄せています。
 「露愁と言う古風な名を持つ若き画家は、今、古き革袋に馥郁たる香に包まれた新しき
  酒「魔笛」をそそごうとしている。」

 
 季刊「湯川」は、このあと長く続きが出ることなく推移し、今年に書房主が亡くなった
ことで、永遠に休刊となったのでした。「daily-sumus」10月16日には、湯川書房は、
いつか季刊「湯川」の続きをだすつもりであったと書いています。これは、「spin」の
編集長の頁でもありまして、たいへん参考になることです。

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