たえず書く人

 仕事帰りにブックオフによりましたら河出書房からでていた「辻邦生作品」
全六巻の1のみが105円で棚にありました。中島かほるさんの装幀による
この作品集は、72年に刊行されたもので、収録されているのは、「嵯峨野
明月記」までであります。
 これから、何度か辻邦生さんの作品はまとめられているのですが、辻邦生さんと
いうと、この作品集のことを思い浮かべてしまいます。装幀もいいし、収録の
作品もいいのですが、ほとんどの作品を文庫本などでもっていたせいもあって、
結局、買うこともなくて、ここにいたっています。しかし、105円となると
買わないわけにはいきません。
 もともと、辻邦生さんの作品に親しむようになったのは、この作品集の内容
見本にあった「篠田一士」さんの推薦文を読んだことでありますが、その文章
では、「夏の砦」のことを忘れがたい作品といっているのでした。
 この作品集がでたときには、「背教者ユリアヌス」の連載がはじまっていたので
ありますが、いまから35年もむかしのこといなりますが、なつかしいことで
あります。
 これからあとは、とんでもなく多作になるのですが、辻佐保子さんによりま
すと「たえず書く人」ということのなるのでした。
ちょうど最新号の「考える人」25号は、「1969年のユリアヌス」という
タイトルで「創作日記」をとりあげていました。創作日記までを出版してしまう
というのはほかに例がないことです。
 新潮社からは全20巻の「辻邦生全集」の広告がでていますが、最近では
珍しい箱入りのもので、平均500ページで二段組みとなっています。
このラインアップをみて気づくのは、ここに収録されていない作品があることで
して、辻さんの文字通りの全集を作ろうとしたら、どのくらいの巻数となるので
しょうか。
辻邦生の長編作品で、これにおさめられていない作品を3つあげなさいなんて
いうクイズができそうな感じであります。