貸本小説 

貸本小説

貸本小説

 昨日に引き続き「貸本小説」末永昭二 アスペクトからの話題です。
 貸本というのになじみがなかったという話を記しましたが、小生と
同世代の人でで、これに親しんでいたなんて人は、ほとんどいない
はずであります。これらの作品に同時代でなじんでいた人が、これらの
作品について、何らかの記録を残すなんてことはなかったはずです。
「 貸本小説の読者層は、小説というメディア自体に興味をもつ層では
なかった。そういった読者層は、読んだ小説が貸本向けか大手出版社の
ものかなど念頭になかったし、今となってはそんな小説を読んだことすら
忘れてしまっている。
 したがって、記録がなんにも残っていない。
 おまけに、アカデミズムの側からは低級なものとして無視される。と
いうより後に文学研究者として身を立てるような人の目には、貸本小説は
入っていなかった。・・
 これらの事情が重なって、貸本小説の現物も記録も残っていない。
残っていないからジャンル自体が忘れ去られてしまった。」

 この本で、取り上げられている作者は、城戸禮、宮本幹也、九鬼紫郎、
園生義人、瀬戸口寅雄、井上孝、高樹純之 などの人ですが、小生に
してもはじめて聞く名前のかたばかりでありました。
 この中の数人は、そのむかしにありました春陽文庫などに作品が収録
されていたようですが、春陽文庫が書店にならんでいたことは記憶に
あるのですが、どのようなものがはいっていたのか、ほとんど覚えて
おりません。
 今は、各社から文庫がでているのですが、そうしたなかには、あの時代の
春陽文庫のような趣のものもあるはずですが、さて、それは何でありましょう。 
 最近は、官能小説とか時代物に特化した文庫シリーズがありますので、
そのへんの作者が、現代に生きる貸本小説家であるのでしょうか。