「LITERARY Switch」第2号 91年7月刊 の池澤夏樹さんへのインタビュー記事も
ありますが、これはもっぱら読書をめぐるものです。
ちょうど、このインタビュー記事はみすず書房から「読書癖1,2」が刊行された
ころのことです。
- 作者: 池澤夏樹
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1999/04/16
- メディア: 単行本
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「読書癖1」のあとがきには、つぎのようにあるのでした。
「大新聞の書評担当を降りた後で、習癖としての読書について書くのにちょうど
いい軽いコラムの預かって、週に一本ずつ三年間続けた。北海道新聞という舞台は、
自分が生まれてしばらく育った土地の新聞ということもあって、気楽で書きやす
かった。」
池澤さんは、実の父である福永武彦が転地療養で、北海道の帯広にきていた時に
生まれたのでありました。詩人でもある母が、北海道の方で、ずっとあとになって
から母の祖先をモデルに「静かなる大地」という小説を書くことになるのです。
池澤さんというのは、母親がその後再婚したことによって、その嫁ぎ先の姓であった
はずです。池澤さんが、なにかの文学賞をうけて、そのパーティーかのあいさつの
時に、池澤の父に感謝しますとかいったという記事があったことをうっすらと
覚えています。( 福永武彦のところに、そのままいたら小説を書くことになど
ならなかったのではないかな。)
ふるさとの新聞に気楽な気分で書いたコラムのことを、「スイッチ文芸版」では
次のように書いています。
「ぼくという個人を出した書評、あるいは書物論を書きたいという気持ちがあった時に
うまく北海道新聞が来てくれた。これは枚数が決まってて、週一本必ず書く、しかし、
なにかしら書物に関わる内容であるということ以外、何の制約もなかった。新刊書を
扱うのはかまわないけれども、それはほかに書評欄があるわけだから、紹介を旨と
した標準的な書評にしなくていい、あるいはしないほうがいい。・・・
読書というのは、その時々新しい本に出会って読むことです。それと同時に、
その度に過去に戻ることでもあるわけです。つまり、一冊の新しい本が開いてくれた
その断面に、過去の本が全部居並ぶ、それがぼくの考える理想的な読書です。
最良の読書というのは、一冊を嫁ながら次々連想で他の本へと戻っていくという
有機的なシステムが生じるものではないでしょうか。」