仕事帰りにブックオフ

 本日は、すこし早くに仕事場をでまして帰り道にあるブックオフに寄りました。
 ブックオフという店は、本当に書籍のヒエラルキーが崩壊していまして、作者の
五十音で商品がならぶとしたら、ノーベル賞を受賞した日本を代表する作家の作品と
この町に住むアマチュア作家の自費出版小説が、なかよく隣り合わせで百円棚に
ならぶのであります。これぞまさしく「書物の共和国」であるのかもしれません。
2700円の定価が5百円、講談社文芸文庫も5百円で、2000円の単行本が
百円でありました。何を買って、なにを買わないか、なかなか難しいことであり
ます。
 本日に購入したのは、次のものです。
 

新・放浪記

新・放浪記

 最近は「本の雑誌」からおりてしまったらしい「野田知佑」さんの自伝エッセイが
百円棚にありました。内容もですが、この時代までの「本の雑誌社」の本は活版印刷
ありまして、本を開きますとプレスをかけたように文字がすこしやわらかめの紙に
めりこんだように印刷されているのでした。本文用紙の選び方も含めて、こだわりの
本づくりとなっているのです。( 「本の雑誌」は数年前まで、活字をつかっての
印刷でありましたが、さすがに印刷会社から勘弁してといわれて、活版をよしたの
でした。その印刷所で最後まで活版でのこったのは、「ホトトギス」であったと
ありました。)
 もちろん、本づくりだけでなく、野田さんの文章も骨っぽくて時代の流れにのら
ないのでありました。
「 ある時、一人の女性がぼくを家族の者に会わせたことがある。彼女の父親と兄が
 でてきて、ぼくを足許から頭までじろじろと見、詰問に近い質問を次々と浴びせかけた。
  そのころのぼくは三十歳以上の『実務的な顔」をした人間が大の苦手だった。・・
  この手の『生活派』の人間とは話が合わないのだ。ぼくが興味を持ち、よく知って
 いるのは川や海や、そこを吹く風や、原っぱで寝ころがって見る星空やそんなことの
 できる旅についてである。この生活力旺盛で、いかにも出世しそうな大人とは何も
 話すことがなかった。」

 野田さんが「本の雑誌」から姿を消したのは、雑誌が「いかにも出世」しそうに
なったからでありましょうかね。