「本屋探偵の回想」2

 推理小説を特にこのんで読むというわけではないので、これが「小説推理」と
いう雑誌に連載されていたといっても、その雑誌がどのようなかたちをしていて、
どのような表紙であるのかもしらないのでした。後半におかれているのは、
「ダビンチ」に連載されたものとありますが、さすがにこの「ダビンチ」という雑誌は
知っているものの、書店の店頭で手にして、このひとのコラムをみた記憶があり
ませんです。
 著者「喜国雅彦」とこの本については、「本の雑誌」で知ることになったのですが、
ミステリマニアというのは、本の蒐集に関して猛烈な熱意を示す物です。
そうしたミステリ愛好家の存在を背景にして、光文社文庫版の「江戸川乱歩全集」
なんて出版物がなりたつのでしょう。この「本屋探偵の回想」には、次のように
ありです。
「 やった、持っていない本だ。しかも乱歩。探求書のど真ん中だ。乱歩マニアの
くせに、こんな本も持っていないのかと、バカにする人もいるだろうか。だが、
それは早とちりだ。説明しよう。元版をもっているのに、なぜ覆刻版を買う必要が
あるのだ。え、自慢げに聞こえた。?もちろん自慢している。なんせ元版はね、
限定千部、乱歩の署名入りなんだからね。ちなみに僕のもっているのは138番。
そんでもってその本とほとんど内容がだぶっている『探偵小説三十年』だって、
書名入りでもっている。・・・でもね、この覆刻はほしかったんだ。だって、
元版は読むのに適さないでしょう。?傷めちゃいけないしさ。読むだけだったら
文庫版でもOKだけど、あっちは図版が入っていないしね。というわけで、安く
見つかるのを待っていたのさ。」 
 このくだりは、「探偵小説四十年」(新装覆刻版) 平成5年 沖積舎
古本屋でみつけたときのコメントであります。この「探偵小説四十年」という
ものの元版は、どのようなかたちであるのかしりませんが、今回の光文社文庫
乱歩全集でみましたら、この全集は文庫版ではありますが、写真が豊富で乱歩初心者
には、おすすめであるのでした。
 この本は、喜国さんの思い入れがたっぷりであります。本の装幀デザインについて
のところには、次のようにあります。
「 函のデザインをやることにする。イメージは仙花紙本。いかにも探偵小説な
モチーフをリストアップしてみる。ないふ、けん銃、謎の女・・・・それにこの本の
テーマである「本」と「本棚」」

 このようなイメージの本をみたことがあるなと思っていたら、小学生のころに
学校にあった箱入りの小説全集などにルーツがあるように思いました。あのシリーズは
ルパン物でしたら、珍しい名前をかたが翻訳を担当していたのですが、どこの学校へと
いっても常備されている感じでして、学校にあったあのシリーズでミステリファンに
なったひとは多いのだろうと思っているのでした。