最強のアマチュア

 最強のアマチュアという言葉から、何を連想しますでしょうか。
 アマチュアでありながら、プロを相手にばったばたとなぎ倒した将棋の棋士
あったり、キューバのナショナル野球チームであったりでしょうかね。
 地方にかかわる歴史とか文化的な行為に関しては、首都とか大都市圏にすんでいると
いうことがハンディになるせいもあって、アマチュアがプロの仕事を、その成果に
よって上回る可能性があるのは、こうした地方をフィールドにした分野において
でしょう。
 小生が、最強のアマチュアと思うのは、本日の朝日新聞夕刊の「人脈記」にとり
あげられている「増山たづ子」さんで写真家、そして記録人としてです。
 徳山村という、現在ではダムの水底に沈んでしまった地域に住んでいた人々を
とり続けた写真に、そそぎ込まれた情熱と時間は、とうていプロの写真家にはでき
ないものです。彼女の仕事はNHKのドキュメントになりましたし、立派な写真集にも
なっているのですが、この写真集は、涙なくしてはみることができないものであり
ます。
 彼女にとっては消えていく村とそこにすんだ人々のくらしを記録に残すというのは、
ほとんど生活のすべてになっていたと思いますが、一カ所にこのように腰をすえて
記録を残すというのは、プロの写真家ではなかなかできないことです。
彼女の活動をささえたのは、「ピッカリコニカ」というだれにでも写すことが
できるというカメラの存在でありますが、コニカのサポートもあったのでしょうが、
こうしたおばさんであっても、情熱と時間があれば、量は質に転換するという
マチュア仕事の見本のような業績で、この時代の偉大なカメラパーソンの一人と
いうことができるでしょう。