森有正さんのこと

 森有正さんは、フランスへと留学したまま、日本に戻らずに語学の教師を
しながら、思索を深めていたというふうに理解をしております。
「遙かなノートルダム」というような哲学的エッセイを発表しています。
明治の大臣「森有礼」の孫にあたって、こどものころからフランス語の教育を
受けていました。父親が牧師かなにかで、オルガンを弾いて、バッハの研究も
していたのではないかな。
 てっきり謹厳実直な人と思っていたら、昨日に購入した野見山暁治さんの
「四百字のデッサン」にかかれているのは、まるで違った一面であります。
「 森さんは女好きなのですかね、と後日私が口走った時、椎名其二さんは
 私のほうにきつい顔をむけた。自分の性欲をもってして他人を推し量って
いけないのです。性欲ほど人それぞれに違うものはないようだ。キミや私などは
女としゃべっているだけで消化できる体質のようだが、森君はそうではなく、
体がいうことをきかないのではないかな。キミはそれをフシダラだというふうに
思ってはいけない。・・・」

 森さんは、野見山さんの目からはふしだらに見えて、それを老アナーキスト
椎名さんは、野見山さんに自分の尺度で判断してはいけないよといっているので
すが、ふしだらにはみえるようなことがあったのですかね。森さんは語学教師を
して糊口をしのいでいたのですが、椎名さんは特別装幀の本を制作していたと
あります。るりゅーるの作家でもあったのでうね。
 そういえば、昨年だったかにひっそりと装幀家である栃折久美子さんが
森有正さんとのおつき合いについて記した本が刊行されました。書店の店頭で
立ち読みをしたのみですが、森さんとはそうとうに親しい間であったようにも
思えましたが、結局のところ結婚などにいたらなかったのは、森さんの女好きの
せいであったのでしょうかね。
 栃折さんはルリュールの勉強のためにオランダへといくのですが、このときに
森さんや椎名さんとパリであっているのでしょうか。(栃折さんの留学の時には、
すでに椎名さんはなくなっているのかな。)