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 岡崎武志さんの「読書の腕前」をみていましたら、「読書論のアンソロジー
数々あれど、雲の上頭ひとつ飛び出して優れているのがこれ。ダンチ、ですよ。
・・・だいたいこの目次の人名を見せて、何人知っているかで、読書人としての
レベルがわかってしまうのじゃないかな。・・読書の腕前が二、三段あがった
ような気になる一冊だ。」とありました。
 そうだ、どこかにこの本もあったはずと、丸谷才一さんの本をかためてある
ところをさがしましたら、この本がでてきました。刊行年は昭和54年とあります
から、いまから30年ほど前のものですね。でてすぐに購入して、ひととおり読んで
いるはずではありますが、ほとんど記憶に残っておりませんでした。
 たしかに、丸谷才一さんが編集するだけのことがありまして、なだたる文学者さん
たちがぞくぞくと登場します。
 鈴木信太郎さんという仏文学者さんは、米問屋をしている富豪のご子息でありますから、
とんでもない稀覯本のコレクターということを聞いたことがありました。この人は、
貴重な本を収蔵するのに蔵のようなものをもっていたはずで、苦労しながら資料購入を
している貧乏学者にとって別世界の話です。
「辰野や僕の書斎は、何といはうと研究や勉強に没頭するのを第一の目的にする場所で
あるが、・・」とありますが、この書斎でうつした写真が、全集の内容見本に使われて
いました。大修館書店からでていたと思いますが、あの書斎の写真をみるにつけ、戦前の
日本の格差社会のすごさを思うのでありました。